留学

スペインでステップアップ[選手編]

サッカー長期留学は計画的に!

より良いチームに入って、プロサッカー選手になりたいです!

サッカー留学を長期的に考えている日本人選手の中には、このようにざっくりとした計画しか持っていない人が多くみられます。

こうなってしまう原因の一つに、「日本とスペインの違いを知らない」ということがあります。

-その選手が考える良いチームとは具体的にどんなチームなのか?
-プロサッカー選手とは?
-スペインでは何部リーグからプロサッカー選手と言えるのか?
-現実的に自分の実力がスペインの何部リーグに当たるのか?
-そのリーグからプロリーグまでどのくらいの差があるのか?
-どのようにステップアップしていくのか?
-それがどのくらい難しいのか?

留学する以上、誰もがより効果的なものを求めるはずです。
そのためには、計画をしっかり考えることが必要です。もちろん、その計画の全てがうまくいくとは限りませんが、元となる計画があれば現地でそれをもとに臨機応変に対応することができるはずです。
そして、より良い計画を立てるためにはまず「知る」ということが必要不可欠です。

スペイン代表やスペイン1部・2部リーグに関しては、日本でもよく知られています。しかし、それ以外については知らないことが多いはずです。その知らないことがサッカー留学には深く関わってきます。
まずはそれを知り、それからサッカー長期留学の計画を立てていきましょう。

リーグの構造を知ろう!

アマチュア・セミプロ・プロ

まずは何がプロで、何がセミプロで、何がアマチュアなのかを知りましょう。

スペインの場合、プロはスペイン1部リーグ・2部リーグ、セミプロは3つのリーグによって段階的に分かれています。そして、アマチュアに関しては各州のサッカー協会の管轄になります。ここでは、スペインの首都でもあるマドリッド州のケースを紹介します。
下の図で確認しましょう。

以前まで、「2部B」と呼ばれていたリーグが解体され、以前からあったスペイン3部リーグと共に、スペインサッカー協会(RFEF)1部・2部・3部となりました。
これにより、リーグにおけるアマチュア・セミプロ・プロの分別が明確になりました。
アマチュアリーグに関しては、各州によってリーグ数・名前が異なります。上記の図では、マドリッド州のリーグ構成を示しています。

マドリッドの代表的なクラブ

ここで、各リーグの代表的なマドリッド州のクラブをざっと紹介します。

  • 1部リーグレアル•マドリッド、アトレティコ•マドリッド、ラージョ•バジェカーノ、ヘタフェ
  • 2部リーグレガネス
  • RFEF1部レアル•マドリッドBアルコルコンフエンラブラダ、ラージョ•マハダオンダ、サンセバスチャン•レジェス
  • RFEF2部:ナヴァルカルネロ、レガネスBアトレティコ•マドリッドBアルコルコンB、アダルベ
  • RFEF3部ラージョ•バジェカーノB、ヘタフェBレアル•マドリッドC[RSC INTERNACIONALという名前で2022-2023は登録されている]フエンラブラダB、モストレス、ラス•ロサス、ラージョ•マハダオンダBなど
  • 上位リーグ:サンセバスチャン•レジェスB、モストレスB、ラス•ロサスBなど
  • 1部リーグ:アダルベBなど
  • 2部リーグアルコルコンC、レガネスC、ラージョ•バジェカーノC、ナヴァルカルネロB、サンセバスチャン•レジェスBなど
  • 3部リーグフエンラブラダC、フエンラブラダD、インテルナシオナル•マドリッドBなど

ユース年代のリーグ構成

高校卒業後からサッカー長期留学をする人からすれば、「もうユース(高校生)は終わったんだから、自分には関係ない。」と考えるかもしれません。
しかし、ある一部の選手は高校卒業後もこのカテゴリーに所属する可能性があります。また、そうではない選手にも非常に関係してきます。

日本人の中には次のようなことを言う人がいます。

スペインサッカー協会3部[RFEF3部]には最低でも行きたい。だって、そんなにレベル高くないんでしょ?
現地の人はユースで上のリーグに入れば、セミプロやプロになってるんでしょ?

次のところで具体的に話しますが、そんなに簡単ではありませんし、それは日本人にとっても現地の人にとっても変わりません。
それを知るためにもユースのリーグ構成を知ることも大事です。

先ほどの大人年代の図と同様、各州のサッカー協会のところはマドリッド州を例にしています。
先ほどと異なることは、上位3リーグそれぞれにマドリッドの代表的なプロチームのエンブレムがあることです。この理由としては、上位2つのリーグでは、同じクラブから2つのチームを所属させることはできないので、この5クラブのように上位3リーグにそれぞれのチーム[U17、U18、U19]があることが理想なのです。
「レアルマドリードなのに、スペイン3部リーグ⁈」と一瞬思われるかもしれませんが、このような理由があるのです。

以上のことを踏まえて、スペイン現地の選手、日本人留学生の現実について話していきます。

セミプロが一つの大きな壁

ここでは、先ほど挙げた日本人がよく言う2つのことにフォーカスして話していきます。

スペインサッカー協会3部[RFEF3部]はレベルが高くいのか?

日本人留学生やそれを送り出す指導者の中には、スペインサッカー協会3部[RFEF3部]に留学1年目から所属したいと言う人がいます。

日本や他のヨーロッパの国でプロサッカー選手であった選手たちを除いて、それは簡単ではありません。

これをまず理解していただかなければなりません。説明します。
先ほど、“マドリッドの代表的なクラブ” のところで、このRFEF3部についても触れましたが、そこに書かれているように、このリーグにはトップチームがスペイン1部リーグにいるクラブのBチームも所属しています。[ラージョ•バジェカーノB、ヘタフェB、レアル•マドリードCまた過去にはアトレティコ•マドリードB、レガネスBも所属していました。]

そんなチームにとっても簡単なリーグではないのです。つまり、将来的にスペインのプロリーグでプレーし得る選手がいるチームですら、このリーグは難しいのです。

サッカー留学をする選手は基本的に、アマチュアの選手です。
高校卒業したばかりの選手、大学サッカーでプレーしていた選手、いずれもプロではありません。さらには、スペインでの選手経歴もありません。
日本の強豪高校の部活動や強豪クラブチームでプレーしていたとスペインで言っても、スペインのクラブのほとんどがそのレベルを想像することはできません。そのため、プロサッカー選手や世代別代表での経験がない選手が、サッカー留学1年目からいきなりRFEF3部に所属することは、とてつもなく難しいのです。

現地のユースの選手は、ユース終了後どこに行くのか?

じゃあ、スペイン現地のユース選手はどうなんだ?となります。説明します。

2022年現在、スペイン代表をはじめ、スペインでは多くの若い選手がプロの世界で活躍しています。そのため、日本に比べて、スペインの方が若い選手と積極的に契約し、どんどんプロの世界へ送り出していると考えるかもしれません。
しかし、現実はそうではありません。

正直に言って、ユース終了後にそのままプロリーグに行く選手の数は、日本より少ないと思います。
ただし、日本よりスペインの方が、セミプロ・アマチュアの国内での注目度が高いので、若い選手が活躍しているように見えるかもしれません。

先ほどのユース年代のリーグ構成の図を思い出してみてください。スペインユースの頂点にはレアル•マドリードを始めとするいくつかのプロクラブが所属する高位リーグ[División de honor de juvenil]があります。
このリーグに所属する選手にとって次の選択肢、すなわち大人カテゴリーでの最初のチームはプロではなく、セミプロです。もっと言えば、セミプロとアマチュアの境目にいます。
そのため、ユース国内リーグ[Liga Nacional Juvenil]の選手の多くはセミプロとプロの境目のアマチュア寄りにいます。もちろん、これら2つのユースリーグの選手においては、アマチュアの中でも上位リーグに所属する可能性が他のユースリーグの選手に比べて高いです。

これはもしかしたらマドリッド州だけかもしれません。
なぜなら、マドリッドにはレアル•マドリッド、アトレティコ•マドリッド、ラージョ•バジェカーノ、ヘタフェ、レガネス、アルコルコン、フエンラブラダというプロクラブがありますが、カンテラ[下部組織/アカデミー]において、レアル•マドリッド、アトレティコ•マドリッドとその他のプロクラブの間には大きな差があるとされています。
この間に位置するとされるのが、他州のプロクラブのカンテラです。例えば、バレンシア、セビージャ、ベティス、ビジャレアルなどです。
そのため、マドリッド州内でオファーはなくても、他州の同じリーグに所属するチームからオファーが来る場合があります。選手個人の話になるので、あくまで可能性の話にはなってしまいますが、こういった話があるのも事実です。

よく考えて見ると、日本でも同じだと思います。
日本のユースリーグの頂点である「高円宮杯 JFA U18サッカープレミアリーグ」の選手たちの多くが、高校卒業後どこに行くかという話です。
ほとんどが大学サッカーへ進学するかプロリーグ[J1,J2,J3]へ行きます。それ以外の選手の中には高校卒業を機にサッカーをやめる場合もあります。なぜなら、サッカー選手を仕事にすることができないからです。

必要な考え方

外国人選手枠

スペインにはまずこれがあることを理解しなくてはなりません。
欧州でも外国人選手枠がない国があります。例えば、イングランドプレミアリーグ、ドイツのブンデスリーガなどです。また近年多くの日本人選手の移籍先となっているベルギーにもありません。
その一方で、スペインの場合、外国人選手枠は25人の選手登録の内3人しかありません。

外国人枠に当てはまるのは、原則スペイン国籍の選手とEU[ヨーロッパ連合]の国の選手以外です。つまり、ブラジルやアルゼンチンといったサッカー大国が多くある南米の国々の選手も外国人枠に含まれます。だたし、先ほど“原則”と言ったように、スペインでの市民権を得ればこれに該当しなくなります。

日本人の場合、まずこの外国人枠の競争に勝たなくてはなりません。また、日本では二重国籍が認められていないので、先ほどの市民権獲得による外国人枠の対象から外れる手段が取れません。

段階的な成長[ステップアップ]

多くのサッカー長期留学をする選手に欠けているのが、この考え方です。
多くの人が、最初からレベルの高いチームに所属することを考えます。これは高校サッカーで考えるとわかりやすいかもしれません。
高校サッカーにおける強豪と呼ばれるチームには100人近くの選手を抱えるところが多くありますが、公式戦に登録できる人数は基本的に20人前後で、仮にBやCチームまでリーグ戦に登録していたとしても、公式戦にほとんど出ることのない選手もいます。しかし、これらの選手でも「〇〇高校にいました」という経歴になります。
それもあり、サッカー留学生には「とにかくレベルの高いチームに所属する」という目的が強くあります。まずはこの考え方を変えるところが大事です。
では、どのような考え方をすればいいのでしょうか?

「どこのチームにいたか」よりも
「どのくらい試合に出たか」が大事

強いチームに在籍するだけでも、“レベルの高い中で普段のトレーニングができる”というメリットがありますが、それ以外に大きなメリットはありません。
強いチームに在籍しても、出場時間が少なければ次の移籍先として考えれるのは、そのチームより下のチームです。それならば、最初から試合出場時間をたくさん与えてくれるチームにいた方が、時間を有効に使うことができると思います。
「同じチームに在籍する中で、スタメンを狙う」と考えるかもしれませんが、日本より選手移籍が頻繁に起こるスペインでは、チーム強化にあたって控え選手そしてスタメン選手でさえ放出対象となり得ます。試合にほとんど出ていない選手が契約を更新することは難しいです。
簡単にまとめた例を比べてみましょう。

  1. 選手①
    1年目:6部リーグ:シーズン出場時間90分未満
    2年目:6部リーグシーズン34試合中17試合出場
    3年目:6部リーグ:シーズン34試合中34試合出場
  2. 選手②
    1年目:5部リーグ:シーズン34試合中30試合フル出場
    2年目:5部リーグ:シーズン34試合中30試合フル出場(昇格)
    3年目:6部リーグ:シーズン34試合中30試合フル出場

前者は初めから「できるだけ高いレベル」を選び、後者は「より出場時間を得られること」を選んでいます。両方のケースで3年目の所属リーグは同じのものの、前者の場合が3年間で合計90分未満で約50試合ほどに対して、後者は合計90分フル出場×90試合です。
前者は「レベルの高いリーグ」にこだわり、後者は「出場時間」にこだわった結果です。

大前提に次のことだけ押さえてください。

選手にとって最大の喜びは「サッカーをプレーすること」

上記に示した例は、あくまでわかりやすくしたものです。

「より出場時間を得られること」を考えて、選んだチームがより上のリーグであれば、理想的です。

とにかく、サッカー選手には「サッカーをプレーする喜び」を一番大切にしてもらいたいですし、練習でアピールすることより“試合の中”でアピールすることを考えてもらいたいです。
もちろん、練習も試合もアピールする場であることは変わりません。ただ、練習だけでは足りないということです。練習に他チームの監督は来ません。他のチームの目に触れるためには試合に出ることが必要不可欠なのです。そうでなければ、ステップアップは不可能です。

ここまで話してきたことを踏まえて、サッカー長期留学の計画を事前に立ててみてください。冒頭にも言いましたが、全てが計画通りにいくことはほとんどありません。
ただし、予定外のことでも、計画をもとに臨機応変に対応することで問題解決が簡単になります。
この計画を立てるにあたって、当たり前ですが、個人によって違うことがあります。日本でプレーしていたレベル、ポジション、年齢などさまざまです。
この記事が、サッカー長期留学を考えている人の参考になれば幸いです。

 

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