サッカー

ビルドアアップをどのように考えるか?

ビルドアアップとは何なのか?

当サイトではビルドアップを次のように定義します。

GKあるいはディフェンスラインの選手から始まる攻撃。
フィールドを2分割した場合、自陣から相手コートへ侵入するまでの過程。
フィールドを3分割した場合、自陣ゴールのあるゾーンから次のゾーンへ侵入する過程。(ゾーン1➡︎ゾーン2)

つまり、「ビルドアップがうまくいく」ということは、GKあるいはDFラインの選手から始まる攻撃で、相手コートに侵入する、前進する、フィニッシュまで行けることを言います。

なので、私は自チームや相手の分析をする時、ビルドアップに関する切り抜きは基本的にGKから始まり、シュートまで行ったシーンを切り抜きます。そして、それらの映像を通して、監督や選手たちに情報を伝えています。
もちろん、常にGKからシュートまでのシーンがあるわけではないですが、極力そのようなシーンを探します。もしなければ、相手のやり方が明確に見えるシーンを探します。

ビルドアップで重要なこと

ビルドアップを考えるとき、重要なポイントが3つあります。

  1. フォーメーション[選手の配置]
  2. 選手の動き
  3. スペース

フォーメーション[選手の配置]

まず最初に見ることは、フォーメーション、つまり選手の配置です。

自チームのビルドアップを分析する時には、GKがボールを持った時の自チームの選手の配置を確認します。そして、それに対して相手がどのように選手を配置してきているのかを見ます。

また、相手チームを分析する時も同様です。
分析する対象のチームに対して他のチームはどのように選手を配置してボールを奪いにいくのか。分析する対象のチームのGKがボールを持った時に、どのような配置を取るのか。
この2点について考えます。

そのため私は、次節の相手チームを分析する際には、自チームと似たようなチームとの対戦映像を探し、分析します。
自チームとフォーメーションが同じ、自チームと同じプレースタイル[コンビネーションプレー/ダイレクトプレー]、この両方が同じチームあるいはこれらの1つが同じチームとの対戦映像を探します。そして、これに加えて直近のいくつかの試合を確認します。

例を図とともに、見ていきましょう。
黒と赤が攻撃側チームで手前から奥へ向かってせます。そして、青と緑が守備側チームです。
攻撃側は1ー4−3−3、守備側は1−3−4−3の並びです。

この時、どこにスペースが生まれやすく、どこに数的優位が生まれやすいのかについて、選手の並びから考えます。

例えば、センターバック(CB)とサイドバック(SB)に注目してみて下さい。この付近では相手のウイング(WG)に対して2対1の数的優位が生まれやすいです。今度はGKとCBに注目してみて下さい。ここでは相手のセンターフォワード(CF)に対して3対1の数的優位が生まれやすいです。
一方で、相手の最終ライン付近に注目してみると、相手と数的同数もしくは自チームのCFの付近にだけ注目すると数的不利な状況が生まれています。
そして、スペースに関しては相手の最終ライン付近より、ボールを持つGK周辺の方がより大きなスペースがあります。

まずは、選手の並びから、数的優位とスペースについての傾向を把握します。

選手の動き

次に、選手の動きについて見ていきます。

攻撃側・守備側ともに、選手の並びから考えられる不利な点を補う動きをチームとして各選手が行います。または、より優位にしたい点を作り出そうとします。

例を図とともに見ていきます。
下図は、先ほどの図から選手の動きがあったものです。

攻撃は、中盤での状況を変えました。先ほどは、3対2の状況でしたが、より中盤で数的優位な状況を作り出すためにCFの選手が下がって、中盤で4対2の状況を作り出しています。
そして、次に考えるべきことは、この選手の動きに対して守備側の相手がどのような動き・アクションをしてくるのかということです。

例えば、「相手のWGの1人とCFで2トップになり、GKからCBへボールが出た時に、自チームのセンターバックにプレッシャーをかけてくるのか?」、「ボールを中心に最終ラインの3人を除いてプレッシャーをかけにくるのか?」、さまざまな可能性を考えなくてはいけません。

そして、その相手の守備の動きに対してどのような解決策を準備するのかが重要です。

スペース

選手の並びから数的優位とスペースについての傾向を把握し、その選手の配置からの各選手がどのような動きをするのかを確認したら、次にするべきことはその選手の動きからどこにスペースが生まれるかです。

例えば、上図の状況で、相手の中盤の選手(MF)2人が攻撃側の2人の選手へプレッシャーをかけた時、どこにスペースが生まれるでしょうか?

プレッシャーをかけてきた相手MFの背後です。

では、この時相手はどのように守備をしてくるのか?
最終ラインの選手もプレッシャーをかけにくるのか?
この時にどこにスペースが生まれるのか?
相手の中盤と最終ラインの間にいる選手が、ボールにより近づいた時も最終ラインの選手はついてくるのか?
その場合、どこにスペースが生まれるのか?そして、そのスペースをどのように攻撃側は活用するのか?

このように考えていきます。
もちろん、サッカーは11対11で行うスポーツなので、ある一定の選手の動きだけを見ているだけでは不十分です。
相手の他の選手がどのようにボールを奪いにきて、それに対してどのようなことを各選手が実行しなくてはいけないのか、これをチームとして考えることが重要です。

ただ前進するだけでは不十分

「ビルドアップがうまくいく」とは…
GKあるいはDFラインの選手から始まる攻撃で、相手コートに侵入する、前進する、フィニッシュまで行けることを言います。

とこのように冒頭で話しました。

つまり、ただ単純に次のゾーンに前進するだけでは不十分なのです。
フィールドを3分割した場合、ゾーン1からゾーン2にボールを運ぶだけでは不十分なのです。そこからゾーン3に前進するためのゾーン1からゾーン2への前進でなくてはいけないのです。そして、ゾーン3にボールを運ぶだけではなく、ゾーン3でフィニッシュをしなくなてはいけないのです。

もっと言えば、フィニッシュをして、相手のゴールにシュートを決めるまでしなくてはいけないのですが、ビルドアップはフィニッシュまでの過程なので、フィニッシュでゴールを決められるかどうかは基本的には「フィニッシュ」の段階の話に変わります。

以上のことから、ビルドアップの映像の切り抜きはGKからシュートシーンまでを含むものであるべきなのです。
なぜなら、もしビルドアップの過程がうまく行っているのであれば、それは単純な前進ではなくフィニッシュまで繋がるものだからです。一方で、フィニッシュまでいけなかった場合には、ビルドアップの過程で必ずどこかにエラーやミスが存在します。

ビルドアップとフィニッシュの関係

先ほど、“基本的には”ゴールを決められるかどうかは、「フィニッシュ」の段階の話になると言いましたが。これがビルドアップの話になる場合があります。
それはゾーン2からゾーン3への前進がうまく行っていない時です。

ゾーン3[フィニッシュのゾーン]では、まず相手ゴールにゴールを決めることができたかどうかで、プレーの良し悪しを決めます。この場合、すでにシュートを打つことができています。
次に、相手ゴールへシュートを打てたか打てていないかで、プレーの良し悪しを決めます。もしゾーン3までボールを運んだにも関わらず、シュートまで行けなかった時には問題があります。

この時、「ビルドアップ(あるいは前進)」の段階に問題があるのか、それとも「フィニッシュ」の段階に問題があるのかで分かれます。

例えば、ゾーン3でサイドからクロスを上げたが、エリア内に人数が少なく、クロスに合わせることができず、シュートできなかったとなれば、問題は「フィニッシュ」の段階にあります。
しかし、ゾーン3に侵入したものの、相手ゴール前までボールを運ぶことができなかったとなれば「ビルドアップ」の段階に問題があります。

例えば、ゾーン3に侵入した最初のプレーで相手にボールを奪われてしまったとします。
この時、相手ゴール前までボールを運ぶことができていないので「ビルドアップ」の段階に問題があると考えます。
では、問題はなんだったのか?
それは、ゾーン1(ゾーン2)からゾーン3に前進できない状況で、前進してしまったということです。
相手の守備が制限しているところにボールを運んでしまった、前方にスペースがないのにボールを前に運んでしまった、こういったことが問題として考えられます。

ボールをゾーン3で失ったからと言って、問題がゾーン3で起こっていると考えることは軽率です。
プレーがうまくいかなかった原因を正しく分析することが重要です。
これはゾーン2でも言えることです。ゾーン2でボールを失った、ゾーン2からゾーン3に前進できなかったからと言って、ゾーン2に必ず問題があるとは限りません。ゾーン1からゾーン2に入る過程に問題があったかどうかも含めて考えるべきです。

最後に

ゴールキックからのプレーの再開は、正確にいうとセットプレーになります。なぜなら、ボールが止まった状況から始まるプレーだからです。

しかし、トレーニングの項目としてはゴールキックからのプレーの再開は「攻撃」の中に含まれます。それは、ゴールキックからのプレーの再開が必ずゾーン1から始まり、その目的が次のゾーンへ前進することとなるからです。

私は分析の項目としても、ゴールキックからのプレーの再開は「攻撃」の中に含めています。
以上のことから、ビルドアップには2つの項目があります。

  1. ゴールキックからのプレーの再開で始まるビルドアップ
  2. プレー中のビルドアップ

それぞれにおいて、どのようにビルドアップしていくのかを見ていくことが、自チームまた、相手チームを分析する上で重要です。

以上が、ビルドアップに関する考え方になります。
今後は、当サイト内でいくつかのチームのビルドアップの例を出していきたいと思いますので、そちらの記事も読んでいただければ幸いです。

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