サッカー

日本対スペインの試合を振り返る

はじめに

今回はW杯予選グループ第3戦の日本対スペインについて話していきます。

まず最初に言いますが、私は「スペイン」側としてこの試合を見ていましたし、この記事でもスペイン側から見た時の意見になります。

両国の健闘に拍手を送った上で、個人の意見を述べさせていただきます。

日本対スペイン

日本対スペイン、この試合について簡単に話をまとめます。

フォーメーション
日本:1−3−4−3
スペイン:1−4ー3−3

試合の流れ
前半、日本は中盤もしくは自陣で守備ブロックを形成。一方でスペインは、相手コートでボールを保持しながら相手ゴールを目指す。
*前半0−1 スペインが一点リードして後半へ。
後半、日本は高い位置でブロックを形成し、相手GKに対してもプレッシャーをかけ積極的にボールを奪いに行く。一方でスペインは前半同様、ボールを保持しながら相手ゴールを目指す。
*後半2−1 日本勝利。日本は後半開始早々高い位置でのプレッシャーからボールを奪ってゴール。2点目は、クロスに対してゴール前に多くの選手を送ることで、クロスの折り返しを決めてゴール。
https://www.youtube.com/watch?v=bbD97ubWiUo ☜ゴールシーンの映像

これが簡単な試合のまとめになります。
個人的な感想をここで述べます。
日本は、素晴らしいプランニングで試合を進めたと思います。
前半とは変わって、後半は積極的にボールを奪いに行き、相手のミスから前線の選手のクオリティーを活かしてゴールを奪いました。2点目では、縦に素早くボールを運ぶ中で、中盤の選手も含めて6人の選手がエリア内にいる状況を作り出しました。守備時にはブロックを形成し、時間が経つにつれその質は上がっていました。またボールを無理に繋ごうとせず、シンプルにボールをクリアするなどミスが少ない試合でした。一方で、スペインは前半に比べミスが増え、日本の守備に対して決定打に欠けていました。
ただ、個人的には、両チームともに前半はより多くの決定機を生む事が可能だったと考えます。

前半 日本0−1スペイン

日本

守備…
日本は前半、中盤と最終ラインの間に大きなスペースを作ってしまいました。なぜなら、センターフォワード(以後CF)に対して相手センターバック(CB)が2対1の状況を作り、相手CBがドリブルで前進してきた時に中盤の選手(MF)が前に出てしまっていたからです。
後半のように、中盤・低い位置でのブロックでは相手CBに対してCFがプレッシャーをかけることで中盤と最終ラインの間のスペースを狭める事が重要だったと考えます。
守備から攻撃への切り替え…
日本は前半、ボールを奪った後、ボールを繋ごうとしていました。しかし、ボール付近に多くの選手を置くスペインは、素早いプレッシャー[即時奪回]を行い、ボールを保持し続ける事ができていました。
しかし、日本には足の速い選手が多くいます。特に、スペースを与えれば相手がどの国であっても危険な選手となります。ボールを保持しようとするのではなく、スペースに素早くボールを送ることの方が、相手に脅威を与えます。実際、後半にはそのような状況が多く生まれていました。

これらのことから、後半のように高い位置からプレッシャーをかけずとも、守備ブロックの位置を中盤もしくは低い位置で、そのブロックをコンパクトにすることで相手の攻撃を防ぐことができたかもしれません。また、ボールを奪った際には足元への短いパスより、スペースへのボールを増やすことでより多くのチャンスを生む事ができたと考えます。

スペイン

攻撃…
先ほど日本の守備について少し話しましたが、中盤のラインと最終ラインの間に大きなスペースがありました。スペインとしては、ボール後方に数的優位を作り、このライン間のスペースにボールを送り込んでいました。ライン間でボールを受けることを活かして簡単に前進し、相手ゴール付近でプレーする機会を増やしていました。
一方で、スペインには選手の足元へのパスが多く、スペースへのパスが多くありませんでした。
ライン間でボールを受ける選手に対しては、日本のCBの選手がボールを奪いにきていました。この時、そのCBが本来守るスペース、後方のスペースが空いていました。
しかし、スペイン側は足元へのパスが多く、このスペースをうまく活用する事ができていませんでした。つまり、中盤の選手がボールを受けた後のプレースピードを上げることができていませんでした。

以上のことから、スペインは相手コートへ押し込んでいたものの、相手のDFラインの背後に生まれるスペースをうまく活用することができなかったことで、前半にゴールを増やす事ができなかったと考えます。
一つ原因として考えられることはスペイン代表には背後に抜け出すようなタイプの前線の選手がいないということです。だからと言ってやりようがない訳ではありませんが、背後のスペースを活かせなかった原因の1つとして考えられるでしょう。

後半 日本2−1スペイン

日本

守備…
後半、日本は高い位置でブロックを形成し、相手GKまでプレッシャーをかけにいきました。
例えば、日本の1点目のシーンでは、次のようなプレッシャーの掛け方をしました。

相手(スペイン)  ⬅︎ 日本
GK            ⬅︎ CF(センターフォワード)
CB(センターバック)⬅︎ WG(ウイング)
SB(サイドバック) ⬅︎ WB(ウイングバック)
MF(中盤の選手)  ⬅︎MF(中盤の選手)
*後方:3対2(3CB vs 2WG)

この時、日本はピッチ中央で数的不利な状況でしたが、CFの選手が相手ボランチの選手へのパスコースを切りながらプレッシャーをかけること、各選手が中間的なポジションを取ること、そしてプレッシャーの強度によってその不利を打ち消していました。

ボールを奪った後の攻撃に関しては、見事としか言いようの無いほど、選手個人のクオリティーが光りました。

スペイン

攻撃…
一方で、スペインは日本の高い位置からのプレッシャーをかわすことに苦戦していました。
日本が高い位置からのプレッシャーをした時に、どこにスペースが生まれるのかを考えなくてはいけません。
スペインは基本的にボール近くに多くの選手を置きます。そのため、相手が積極的にプレッシャーをかけてきた際に生まれるスペースは背後のスペースになります。今回の場合、日本の中盤と最終ラインの間にスペースがありました。しかし、スペインは変わらず短いパス・足元へのパスを多用していました。つまり、スペースへボールを送り込むことをしなかったのです。

そりゃそうでしょ!スペインサッカーはボールを保持しながら前進するんだから。

ボールを保持しながら前進したいからと言って、“ロングボールを使うな”という訳ではありません。
ロングボールを使ってもボールを失わなければ、コンセプトを守っています。
また、コンセプトとは概念、大まかな考え方であり、ルールではありません。時間帯や試合の状況によってはそれを変えることは必要です。

ただ、今回に関してはコンセプトを変えるべきと言っている訳ではありません。
繰り返しますが、ボールを保持しながら前進したいからと言って、ロングボールを禁止している訳ではありません。
スペースがあれば、ロングボールを受けた時にコントロールすること、また違う選手を送り込むもできるので、ボールを失わずに前進することが可能です。

しかし、スペインのGKからの長い距離のパスは全てDFラインの選手に対してのものでした。特にサイドバックに対してです。しかし、そのスペースでは数的優位を活かすことは難しい状況でした。

また、攻撃時に相手コートに押し込んだ時、組織作りができていなかったと言えます。
日本は後半になり、足が早く、大きなスペースを活かせる選手を増やしました。こういった選手がいる時、ボールを失った時が非常に危険です。
必ずそのリスクをマネイジメントしなければいけません。しかし、後半早々に2失点を許したスペインは、攻撃に集中し、ボールを奪われた後のマネイジメントに意識を向けることが不十分だったと考えます。

最後に

今回の試合を通して、2つのことを感じました。

1つは、一つのことを極めることは重要だということです。
日本はこの試合、「守備ブロックからの縦に速いプレー」で勝利を掴みました。
一方で、スペインは「ボールを保持し続けながら前進するプレー」でこの試合の多くの時間を支配しました。
また両チームはこの試合だけではなく、日本はドイツ戦、スペインはコスタリカ戦で、それぞれのチームはそんの特徴を遺憾なく発揮しました。

もう1つは、1つのことを極めるだけでは不十分だということです。
日本は、中盤・低い位置でのブロックだけではなく、高い位置でのブロックでの守備をそれぞれ高いレベルで行っていました。
一方で、スペインはボール保持において右に出るような国はないと思いますが、そのプランを阻止されたときの解決策に、今回の試合においてはかけていたと思います。
おそらく、スペインのチーム・選手のクオリティーからして、今回話した解決策を実行することは可能ですし、スタッフもその考えは持っていたと思います。ただ、それを予想できたいたのか、疑問が残ります。
また、スペインがこれを実際にして来た時に日本側はその対策をしていたかどうか、気になるところです。

スペインも日本も本当に素晴らしい試合をしたと思います。
今回はW杯という大きな大会の試合について話したましたが、サッカーを学ぶことにおいてさまざまな試合を見ることが重要です。
今後もこのような話を当サイトの中でしていきたいと考えています。

COMMENT