サッカー

ユース2部の選手への指導とクリニックへ来る選手への指導の違い

自チームとサッカークリニック

自チーム

現在私が所属しているチームは、スペイン国内ユース2部リーグにいます。
スペイン国内ユース2部リーグと言っても、スペイン国内の各州にグループがあるので、日本のユース年代で言うと、プリンスリーグのようなものになるかと思います。
ちなみにユース1部リーグは、国内で7グループに分かれています。1グループ16〜18チームです。

ただし、マドリッド州の場合、多くの有名クラブのユースチームが所属しています。
例えば、自チームの所属する2部リーグには、レアル・マドリッドB、アトレティコ・マドリッドB、ヘタフェB、レガネスB、ラージョ・バジェカーノB、他にもトップチームがスペイン3部、4部にいるクラブのユースチームが所属しています。

ここで言いたことは、「自チームの選手たちはある程度のレベルを持っている」と言うことです。プロになるような選手たちではないですが、ここで挙げたチームとリーグ戦を戦えるレベルを持っている選手たちです。

サッカークリニック

私は、自チームでの活動以外に、週末にスペインの選手に指導をすることがあります。
このサッカークリニックは、あるマドリッドのクラブが主催する練習会になります。指導者はもちろん、選手たちもチーム活動とは別で参加しています。

ここに来てくれる選手たちは、下は7歳から上は12歳までいます。
日本だと、「小学生」「第4種」と言う一括りになると思いますが、スペインの場合、3つのカテゴリーに分かれます。
この中でも一番参加人数の多いカテゴリーが、10歳、11歳の選手たちです。
今回は、この選手たちを「サッカークリニックに参加する選手たち」の例とします。

ここに参加する選手たちのレベルは、自チームの選手たちとは異なります。
もちろん、年齢や体格の違いもありますが、同じ年代の上位リーグに所属する選手たちと比べても、このサッカークリニックに参加する選手たちは、さまざまな点で劣ります。

今回は、自チームとサッカークリニックの練習の違いとそれに伴う練習の作り方・指導の仕方の違いについて話していきます。
そして、この話をもとに選手のレベルの違いを理解し、それに対応することの重要性について考えていただければ幸いです。

2つの練習の違い

ここからは自チームとサッカークリニックの選手間にある違いについて話していきます。

技術の違い

まず最初の違いは、ボールを扱う技術です。

例えば、サッカークリニックに参加する選手の中には、10mの距離のパスを正確に蹴ることができない選手もいます。ここで言う“正確に蹴る”とは、ボールを地面に滑らせながら、求められた位置にボールを蹴ることです。そして、これができないとは、ボールが浮いてしまったり、求められた位置から2・3mずれたところにパスを出してしまうことです。

日本サッカー協会の指導者教本にも出てくる正方形の外側でパスを回すトレーニングをイメージしてください。
このトレーニングの中で、ボールがあちこちに行って、選手がグリッドから離れてボールを拾いに行くような事が度々起こることが、彼らの持つレベルを表しています。

一方で、ユース2部の選手にもなってくると、10mの距離のパスでミスすることは、集中力が切れない限り、まずあり得ません。
先ほどの正方形の外側でパスを回すトレーニングでは、ほぼ毎回のように全ての選手が2タッチでプレーします。

例として10mの距離のパスについて話しましたが、ボールを扱う技術にはさまざまなものがあります。
パスを受ける時のボールコントール、ドリブル、フェイント、シュート、ヘディング、細かく分類すれば、もっとあります。
それら全てにおいて、2つの練習には大きな差があります。

理解度の違い

次の違いは、練習の理解度です。

この理解度には2つの種類があります。
1つは、練習の進め方を理解できるかどうか、もう1つは、サッカーの理解度です。
今回、ここで話したいことは、前者の「練習の進め方の理解」です。

練習の進め方の理解
例えば、試合を想定したパス&コントールの練習を準備したとします。このメニューでは、6か所並ぶ位置があります。1つのプレーが終わる度に、選手たちは次の位置へ並びます。そのため、指導者はどのようにローテーションするのか、プレーした後にどこへ並ぶのかについて説明します。

この時、サッカークリニックに参加する選手たちの場合、ローテーションの仕方を覚えることができません。そのため、練習がスムーズに進みません。
これは、技術による問題ではなく、理解度による問題です。
一方で、自チームの場合、最大8か所くらいまでであればローテションを瞬時に理解します。なぜなら、並ぶ位置が6か所や8か所であってもそこには規則性があるからです。例えば、左右が対称になっているローテーションで、正確には3か所×2のオーガナイズの場合などです。

練習の進め方を理解できない状況では、技術的な話や戦術的な話ができません。練習をすることでプレーの改善をするのではなく、練習の目的が練習を進めることに変わってしまいます。これは良いことではありません。

身体的能力の違い

スペインでは、日本の部活動などとは異なり、基本的にチーム・指導者が選手を選ぶ事ができます。選手の能力に関係なく、選手が希望すれば入れると言うことではありません。
そのため、チームに所属する約18名〜25名の選手の身体的能力に大きな差はありません。

これは身長がほぼ同じ、足の速さがほぼ同じと言うことではありません。
そのチームが所属するリーグの競技レベルでプレーする中で生まれる身体的負荷に対応できるかどうかの話です。
例えば、165㎝の選手と180㎝の選手が1対1をしたときに、身体的能力の違いから180㎝の選手が常に勝つことはありません。

一方で、サッカークリニックの場合、応募してくれた選手たち(希望性)になるので、身体的能力に差が出る事があります。
例えば、10歳の選手22人から申し込みがあり、12歳の選手2名から申し込みがあった時、私が参加しているサッカークリニックでは10歳の選手たちを10と12に分け、10人の方に12歳の選手を入れることがあります。この時、10歳と12歳の選手で体格に大きな差がある場合があります。

これは、選手を選んで活動するチームと選手を選ばないサッカークリニックの大きな違いの1つと言えます。

気持ちの違い

最後は、気持ちの違いです。

ユースの選手の場合、競争心と向上心が強くあります。
そのため、指導者に言われるまでもなく、全ての練習に集中し、わからないことがあれば聞く、指導者の声には耳を傾ける、チーム内で要求されることに対して、多少厳しくとも応じようと努力し続けます。
それは、少しでも上達したいと言う気持ちと、試合に勝つと言う気持ちから行動を起こしています。おのずと、練習中の強度のレベルも上がります。

一方で、サッカークリニックに参加する選手たちの頭の中には、「楽しく」が第一にあります。
試合のない日に友達と集まってサッカーをする、その場所がサッカークリニックなのであって、競争心を強く持っていません。

しかし、サッカークリニックの目的は、少しでもサッカーで上達することです。競争心や向上心のない中で行っても、その目的を達成することはできません。保護者の方が申し込む理由も、子供たちが少しでもサッカーで上達できる機会があればと言うことで、参加申し込みをしてくれています。
なので、指導者が度々、選手たちに集中すること・疑問があれば聞くことなどを求める声をかけなくてはいけません。

どのように練習を作るのか

ここから、今話してきた違いを踏まえて、それぞれの練習において意識していることについて話していきます。

指導内容

サッカークリニックの場合、「いろいろなことを求めすぎない」と言うことを意識しています。
一方で、ユースの場合、プレーの細かいところまで厳しく求めます。

これは選手の気持ちによる問題です。

多くのことを求められることに、選手たちはある一定のストレスを感じます。
競争心と向上心を強く持つユースの選手たちに対しては、ある程度厳しく求めることが可能ですし、それが必要です。なぜなら、それが所属するチーム・リーグの競技レベルだからです。

ただし、先ほども言いましたが、サッカークリニックの選手たちの頭の中に第一にあることは「楽しく」です。保護者や指導者がどのように考えていたとしても、10歳・11歳のこれらの選手たちに対して、ユースの選手たちと同じメンタリティーを求めることは見当違いです。
*レアル・マドリッドようなチームの同年代の選手ともなれば、話は異なります。

ここで注意していただきたいことは、あくまでこれは私の経験の話です。
サッカークリニックもチームも私のいるところの話です。全てのチーム・全てのサッカークリニックの選手たちが今回話しているようなわけではありません。
今回の話は、選手のレベルの違いを理解し、それに対応することが大事だと言う話です。

例をもとに話します。
先ほどの正方形の外側でパスを回すトレーニングをイメージしてみましょう。
このトレーニングで抑えたいことは以下のことです。

  • ボールを受ける前にコーンから離れ、自分の前にプレーするためのスペースを作る。
    この時、体は半身。ボールと進行方向を意識する。
  • 最初のコントールはボールから遠い足。ファーストタッチで前方へコントール、次のタッチでパス。
  • パスはパスの受け手のボールから遠い方の足に出す。
  • パスを出した後は、スプリントをして、パスを出した先に並ぶ。

これが基本です。

まずは簡単に「ボールを右回りに回していくよ。パスを出した後は、パスを出した先に移動してね。それで、この練習で練習することは…」と基本的にやらなければいけないことを説明します。

ここまではどんな選手たちに対しても要求します。
ただし、ここからの話が少し変わってきます。例えば、同じ正方形の形でパス&コントロールの練習をする時、いくつかのバリエーションを用意します。
バリエーションを4つ持っている時、サッカークリニックの選手たちは順にバリエーションを行う中で、理解ができていない・うまくいっていないことがあれば無理には次のバリエーションに進みません。しかし、ユースの場合、時間的な配分のミスや変更がない限り、全てを行います。
なぜなら、ユースの選手たちは説明すればある程度のことはできるからです。その中で、各バリエーションで求められる全てのプレーを集中して行う、しっかり意識して行うことを強く求めます。

練習メニュー

私がサッカークリニックの練習を考える上で意識していることは次のことです。

  • 基本を抑える。
  • 練習を複雑にしない。
  • *接触プレーの多い練習は避ける。

基本を抑える。
基本を抑えるとは、チームによって変わるやり方ではなく、サッカーをする以上変わらないことを教えることです。
例えば、「ボールを持ったときはスペースを広く使い、ボールを失った時はスペースを狭くする」といったことです。
「ボールをコントロールするときは足を少し上げて、ボールの真ん中に足の内側をクッションのように当てるんだよ。」といったような話はしません。なぜなら、ボールを扱う感覚は選手それぞれだからです。また、サッカーをプレーしている最中に、ボールを止めようとする度にそのようなことを考えている時間はありません。
チームや個人によって変わることではなく、サッカーにおける基本的なことを抑えるように意識しています。

練習を複雑にしない。
理解度の違いのところでも話したように、ローテーションの数・並ぶ位置を増やすことは選手の混乱を招いてしまいます。
なので、パス&コントロールのような相手のいない練習ではローテーションを複雑にしないこと、多くても4つまでにするように意識しています。
*なぜ“4”なのか?

-経験上どんな選手であっても四角形のローテーションはできると考えています。そして、四角形は頂点が4つあります。以上のことから、並び位置・ローテーションが4つまでであれば理解できると考えています。これが、4を基準とする理由です。

また、ボール保持などの相手のいるトレーニングでは、ルールを複雑にしないように意識しています。攻撃時、守備時、攻守の切り替えの各局面における目的・アクションを明確かつ1つにするようにしています。例えば、ユースの練習の場合、プレーの中での制限以外にも、ゴールをするために制限をつけたりします。プレー中は2タッチ以内、ゴールするためには、必ず両サイドの選手とプレーしてから出ないとゴールを目指せないなど。

*接触プレーの多い練習は避ける
これは参加する選手の間に身体的能力に大きな差がある場合に意識していることです。
基本的に1対1の状況が生まれるようなトレーニングはしません。もし仮に、相手を抜き去る技術のトレーニングをしたい場合は、コーンなどで代用するか、守備側に何かしたらの制限をつけるようします。例えば、攻撃側に比べ、守備側の方がプレーを開始する位置がボールから遠いなど。
ボール保持などでも、1対1の状況が生まれることを良しとしないものにします。つまり、シンプルかつ素早くプレーすることを求めるトレーニングにします。ボールを素早く動かして、相手の守備を交わすと言うことを求めます。また守備側には全力でボールを奪いにいくことを求めます。相手のプレッシャーのスピードを上回るくらい素早く判断をすることができれば、ボールを失うことはありません。

ただし、身体的能力に大きな違いがない場合は、異なります。
チーム活動の場合がそれに当てはまります。この時、より強度を求めます。1対1のトレーニングも必要であれば行います。
また、他の要素も同様に、チーム活動の場合は制限なしに考えます。考えていることは、チーム・選手の課題を改善するためのより良い手段・トレーニングです。

最後に

最後に繰り返し伝えさせていただきますが、あくまでこれは私の経験の話です。
サッカークリニックもチームも私のいるところの話です。全てのチーム・全てのサッカークリニックの選手たちが今回話しているようなわけではありません。
今回の話を通して、選手のレベルを理解し、それに対応することの重要性について考える機会になればと思い話しました。

選手のレベルを無視して、やりたいことをやるでは指導者の仕事としては不十分だと言うことです。

例えば、SNSや本で、「これ良い!」と思う練習を見つけたからといって、何も考えずにそのまま使うことは軽率な行動だと言うことです。

当たり前ですが、チームの選手・そこで起こっている事、その全てがそれぞれのチームで異なります。さまざまな意見を参考にすることは、何かを学ぶ上でとても重要なことです。ただし、それに対して吟味する時間を作る必要があります。

色々考えた上で、うまくいかないこともあるでしょう。
私にもあります。
それでも、色々考えた上での失敗は必ず学びに繋がります。
常に学び続け、次をより良いものにできるように努めていきましょう。