今回は、サッカーの基本を抑えることを目指します。
「サッカーの理解」「分析」「トレーニング構築」全てのレベルを向上させる上で必ず必要なことです。この重要性を理解した上で、本題に入りましょう。
サッカーというスポーツ
まずはサッカーというスポーツがどんなものなのかを考えてみましょう。
今回は11人制サッカーで考えます。
- 縦に長い長方形のフィールド[参照:105m×68m]
- 2つのゴール(各チーム1つ)[参照:7.32m×2.44m]
- ボールは1つ
- 11人対11人(1チーム11人が2チーム)
[いずれかのチームが7人未満になった場合、
試合は開始も続行もされない。] - 11人の内1人は必ずゴールキーパー
- 決められた規則のもと試合を行う
[GKキック、ファール、CKキック、オフサイド、
イエロー/レッドカードなど]
ざっくりとまとめると、このようになります。
「サッカーは面白いスポーツ」「サッカーは危険を伴うスポーツ」「サッカーは競技性の高いスポーツ」「サッカーは人気のあるスポーツ」
このようなことは“主観”であり、客観的にサッカーというスポーツを定義するものではありません。
サッカーを構成する局面
先ほど挙げた“客観的にサッカーを定義した”リストの中に、
「ボールは1つ」そして「11人対11人(1チーム11人が2チーム)」というものがありました。
以上のことから、
サッカーというスポーツでは、
ボールを持っているチームとボールを持っていないチームが同時に存在する。
ということがわかります。
ボールを持っているチームを「攻撃」しているチーム、ボールを持っていないチームを「守備」をしているチームとします。
そして、サッカーでは、野球のようにこの「攻撃」と「守備」が変わる明確なルールが存在しません。つまり、試合の中で断続的に「攻撃」と「守備」の切り替えが起こります。
上の図のように、サッカーを4つの局面に分けることができます。これに加えて、セットプレー、ボールが止まった状態から始まるプレーがあります。ゴールキックからの再開、コーナーキック、フリーキック、スローインがこれにあたります。
これを踏まえた上で、各局面にどのような種類があるのかを見ていきましょう。
攻撃
それぞれ4つの局面にはそれぞれいくつかの種類があります。
まずは攻撃からみていきましょう。
- コンビネーションプレー
- ダイレクトプレー
“コンビネーションプレー”とは、「ボールを保持しながら相手ゴールに向かって前進する攻撃」です。
一方で、“ダイレクトプレー”とは、「直接的に相手ゴールに向かって前進する攻撃」です。
攻撃から守備への切り替え
- 即時奪回
- 後退
“即時奪回”とは、「ボールを失った後に、できるだけ早くボールを取り返すこと」です。
そして、「後退」とは、「ボールを失った後に、後ろに下がり相手チームの前進を遅らせること」です。日本サッカー協会の指導者講習会では、「リトリート」という言葉を用いる場合があります。
守備
- 高いブロック
- 中盤のブロック
- 低いブロック
守備に関しては、チームの守備組織全体の位置の高さによって種類があります。
“高いブロック”とは、「チームの守備組織全体が相手陣地に入っている高い位置での守備」のことを言います。日本では“ハイプレス”や“プレッシング”と呼ばれているものです。
“中盤のブロック”とは、「フィールド中央を中心にチームの守備組織全体がある中盤での守備」のことです。
“低いブロック”とは、「チームの守備組織全体が自陣に入っている低い位置での守備」のことを言います。
これは「チームの守備のスタートラインの高さをプレー中、主にどこに設定しているのか」で判断します。
守備から攻撃への切り替え
- カウンターアタック
- 安全なパス
“カウンターアタック”とは、「ボールを奪った後に素早く相手ゴールに向かうこと」です。
一方で、“安全なパス”とは、「ボールを奪った後に、確実にボールを繋ぐこと」です。
どのように使うのか
ここまで話してきたことは、多くの人が知っていることだと思います。
なぜなら、タイトルにもあるように「サッカーの基本」だからです。
ただし、「知っていること」と「それを使えること」は大きく意味が異なります。
冒頭でも触れたように、今回の内容は「サッカーの理解」「分析」「トレーニング構築」の向上を助けるものとなります。
サッカーに対する理解・考え方には人によって異なるものです。
しかし、それに正解はなくとも、間違いはあります。
では、その間違いとは何なのか?
それは、主観的にサッカーを理解しようとすることです。
「(なんとなく)・・・と思う」と考えているときは、大抵が主観的にサッカーを理解しようとしている時です。
常に、それぞれの現象に“なぜ?”という疑問を持ってみましょう。
そして、その疑問を解決するためには何よりもまずいつ[どの局面で]問題が起きていたのかを整理する必要があります。
例題
あなたはあるチームの監督です。
週末に試合がありました。その試合であなたは自チームに問題・改善点があると考えました。あなたはこれをどのように解決しますか?
まず考えるべきは、あなたが「チームとしてどのようなことをしたかったのか」ということです。
ここで各局面ごとに、チームとしてやりたかったことをまとめてみましょう。
攻撃:
攻撃から守備への切り替え:
守備:
守備から攻撃への切り替え:
例えば、考えていたことが次のようなことだったとします。
攻撃:コンビネーションプレー[ボールを保持しながらの前進]
攻撃から守備への切り替え:即時奪還[早くボールを取り返す]
守備:高いブロック
[チームの守備組織全体が相手陣地に入っている高い位置での守備]
守備から攻撃への切り替え:カウンターアタック
そして、試合の中で起こっていた問題が「ボールをたくさん失っていた」だとします。
では、どの局面に注目しますか?
攻撃です。
なぜなら、チームとしてやりたかったことは、ボールを保持しながらの前進です。つまり、ボールを失う回数が多かったことは、やりかったこととは異なります。
たとえ、試合の結果が勝利だったとしても、よりチームを良くするため、今後勝つ確率をより高めるために改善点を見つけることは大切です。
ここで1つ疑問が生まれると思います。
それは「ボールをたくさん失っていたこと」の“たくさん”は主観ではないのか?もし主観であれば、間違いなのではないか?という疑問です。
これは監督やチームが1つ基準を持っておくと良いと思います。
例えば、「パスを3本以上繋げることができている時間よりもできていない時間の方が長かった」「相手チームの方がボールを長い時間保持していた」などがあります。こういった基準を持っていると、スタッフ同士でのミーティングでの意見交換や選手への説得力につながります。
ただ、「誰がどうみても…」という場合もあるので、あくまである程度の基準を頭に入れておく程度で十分だと思います。
話を戻します。
チームでの問題点が、攻撃の局面にあること、そしてその問題はボールをたくさん失っていたことが、ここまででわかっています。
それでは、次に「“なぜ”ボールをたくさん失ってしまっていたのか?」を考えましょう。
これを考えるためには、ボールを保持するために必要なことを知っておく必要があります。これさえ知っておけば、あとは問題が起こっているシーンでその中の何が欠けていたのかを見るだけです。
最後に
サッカーには局面があります。
それはチームの問題を解決する過程で絶対に知っておかなくてはいけないことです。
チームのどこに問題があるのか?
攻撃なのか、守備なのか?
ボールを奪われた時、攻撃から守備への切り替えの時なのか?
ボールを奪い返した時、守備から攻撃への切り替えの時なのか?
まずはこれを理解しなくてはいけません。
そして、ここから少しずつ深掘りしていきます。
攻撃の中のどこに問題があったのか?
ポジショニングなのか?テクニックなのか?判断なのか?
ポジショニングにどのようなミスがあったのか?どうするべきだったのか?
このように分析していきます。
分析して問題がわかれば、トレーニング構築ができ、トレーニング中の問題をコーチングすることができます。
次の記事で、「ボールを保持するために必要なこと」について話します。
今回のところは、サッカーというスポーツを再認識し、サッカーに局面があることをしっかり抑えることにしましょう。