サッカー

センターバックのドリブルでの前進

センターバックによる前進

前回の記事「前進のアクションの練習例」で、前進のアクションには2種類ありました。

  • ドリブルでの前進
  • パスでの前進

今回は、センターバックによる前進、特にドリブルでの前進について考えていきます。

センターバックがドリブルでボールを前に運ぶことができる位置はどこまでなのか?
センターバックが自分のポジションを大きく離れて、相手のペナルティーエリアまでドリブルでボールを運んでもいいのか?
いつドリブルを選択して、いつパスを選択するのか?

これらの疑問を念頭に話を進めていきます。

センターバックと他のポジションの違い

まずは、センターバック(以下CB)とは何なのか、これについて考えます。

サッカーにはさまざまなシステム•フォーメーション[選手の配置]があります。
11人制サッカーであればCBが2人の場合とCBが3人の場合があり、8人制や7人制であればCBが1人もしくは2人の場合が考えられます。

CBというポジションを定義する上で重要なことは、その選手がプレーする場所の特徴を考えることです。

CBと呼ばれる選手は、基本的に最終ラインを形成することになります。これは守備の局面だけではなく、攻撃の局面においても言えることです。
つまりCBとは、GKを除いて、チームの中で自陣ゴールに最も近い位置でプレーする選手となります。
*サイドバックやボランチ[アンカー]の選手が最終ラインでプレーすることもありますが、て今回はそれを例外とします。
*もう一つの例外として、セットプレーがあります。セットプレーの中でも攻撃側の時、CBが最終ラインではなく、逆に相手ゴールにより近い位置でプレーすることがあります。

次に、CBと他のポジションを比較してみましょう。
今回は、攻撃の局面における「前進のアクション」について考えるので、攻撃の局面、つまり自チームがボールを持っている時について考えます。

ここで頭に入れておくべきことは1つです。
CB=自陣ゴールに最も近い位置でプレーする選手(GKを除く)

図を見てみましょう。

左図は、CBがドリブルで“前進”もしくはボールを前に運んだ時に、ボールを奪われたシーンです。一方の右図は、ボランチ[アンカー]の選手が同様のアクションをしたシーンです。

ここで注目してもらいたいことは、青色の丸で囲まれたスペースです。
左図の場合、“CB=自陣ゴールに最も近い位置でプレーする選手(GKを除く)”ということから、後方に大きなスペースを与えてしまいます。また、このスペースを埋める味方選手はいません。

じゃあ、GKが高い位置を取ってこのスペースをカバーすればいいじゃないか!
そうではなくとも、もう1人のCBがカバーに間に合うだろう!

まずはGKについて説明します。
「守備において理解しておかなくてはいけないこと」という記事で伝えましたが、守るべきスペース•ゴールは必ず後方にあります。本来のポジションを離れて前に出ることは、そのスペースを大きく空けることであり、それはリスクを冒すということです。
特に、GKが自陣ゴールから離れすぎることは避けるべきことです。

次に、もう1人のCBのカバーについて説明します。
確かにカバーは間に合うでしょう。しかし、相手がボール自陣ゴール方向により進める状況になることも確かなことです。なぜなら、そこにはスペースがあるからです。
では、スペースのないビルドアップのゾーン(フィールドを3分割した時の自陣ゴールのあるゾーン)ではどうでしょう。相手に大きなスペースを与えることはありませんが、よりゴールに近いでの相手のプレーを許してしまいます。

以上のことから、攻撃の局面におけるCBの重要なポイントは次のことになります。

1対1の状況を避ける[1対1をしない]

1対1をしないということは、相手選手との接触なしにプレーをすることです。
間違えてもらいたくないことは、ここで話していることは「攻撃」の局面についてです。攻守の切り替えでもなければ、守備の話でもありません。

各選手の特徴に基づいて考える

ということは、1対1を避けている状況ではCBはドリブルでどんどん前進しちゃっていいんだよね?

ここではNOと答えさせていただきます。

いや、何でだよ?ということは、目の前に前進するスペースがあってもCBはドリブルで前進しちゃいけないのかよ!

では、図で見てきましょう。

この図は、CBの目の前に前進するためのスペースがあり、ドリブルで前進し続けた場合のシーンです。

一般的にこのような状況ではSB/CBもしくは、図のように中盤の選手(MC)が、ドリブルで前進していくCBのスペースを埋めることになります。
ただし、この時考えてもらいたいことは、攻撃から守備への切り替えが起きた時です。つまり、この状況でボールを失った時です。

この時、最終ラインを形成する選手はもう1人のCBと中盤の選手です。
仮に、相手チームがボールを奪ってすぐに最終ラインもしくはその背後にロングボールを蹴ってきた時、中盤の選手はCBの選手と同じようにプレーすることができるでしょうか。

選手の例を出します。
例えば、この時の中盤の選手がチアゴ•アルカンタラ選手やペドリ選手ような選手だとします。このような選手たちがCBと同じように、ロングボールに競り合ったり、背後へのロングボールに対して守備ができるでしょうか。
できないということはありませんが、CBと同じようにはできません。

ここで言いたいことは、CBはCBの選手だからそこでプレーしているということです。これは他のポジションの選手にも言えることです。
中盤の選手は、そこで輝けるからこそ中盤の選手としてプレーするのです。前線の選手、サイドの選手、さまざまな特徴を持った選手が、それに適したポジションでプレーするのです。

以上のことから、CBのドリブルでの前進においてポイントは次のようになります。

自分のポジションから離れ過ぎず、1対1を避けてプレーする。

では、“自分のポジションから離れ過ぎず”ということは、どのように判断するのか?

1つの基準として、CBがドリブルで前進できるラインは1本までとすることです。

左図の場合、相手のプレッシャーラインをCBが2本超えています。
右図の場合、相手のプレッシャーラインを1本超えた後に、CBはパスを選択しています。

右図のようにプレーすることで、CBは自分のポジションから離れずにプレーすることができます。相手のプレッシャーラインを1本超えた後には、パスを選択する意識を持つといいでしょう。

パスとドリブルの選択

次に、いつCBはパスを選択するのかについて考えます。

まず、CBは必ずドリブルで前進しなくてはいけないのか?
そんなことはありません。

一番最初に話したように、前進の仕方には大きく分けて2種類あります。
ドリブルでの前進とパスでの前進です。

パスを選択するタイミングの1つとして、先ほど話したように、“相手のプレッシャーラインを1本超えた後”ということがありました。しかし、ドリブルでの前進だけではない以上、ドリブルをせずにパスのみで前進すること、また前進しなくともパスを選択する時があります。

ここで、パスの種類を大きく2つに分けてみましょう。
1つは前進のパス、もう1つは循環のパスです。

循環とは、パス回しをイメージしてもらうとわかりやすいと思います。
相手のプレッシャーラインを越えずに、そのラインの目の前でボールを動かすことです。

前進のパスの目的は、言葉の通り「前進」です。
一方で、循環のパスの目的は「前進するためのスペースを作り出すこと」です。

つまり、前進するためのスペースがない時にはパスを選択します。

では、前進するためのスペースはあるがそのスペースに味方選手がいる時、CBはどのようなプレーを選択するのか?

パスです。

理由は2つです。
1つは自分のポジションから離れ過ぎないようにすること、もう1つはこの状況下でCBがドリブルした場合、プレーするためのスペースが狭まるからです。

図の右CBのプレーが正しくそれです。
図の左CBは、ボールを前に運ぶことでパスの距離を短くして、パスの正確性を高めてから、パスでプレーをしているシーンです。

右CBのプレーだけど、ドリブルでの前進に対して中盤の選手が離れるような動きをすれば問題ないんじゃない?

その通りです。
ただし、この時この2人の選手の関係だけではなく、他の選手の関係性にも注目してください。例えば、ドリブルするためのスペースを開けるために右斜め前に動いた場合、そこには違う選手がいるため、1つのスペースに2人の選手がいる状況になります。

今回はCBの前進について話していますが、最終的にサッカーはチームスポーツなので、CBという1選手の関係性だけで、話を完結させることはできません。

図では、ドリブルでの前進との比較のために、一番近い味方選手へのパスしか記していませんが、より相手ゴールに近い位置(前方)にいる選手にパスを出すことは何も問題ありません。むしろ、その選手がフリーなのであればそちらの方が効果的と言えるでしょう。

それでは、ここまでの話をまとめます。

CBがパスを選択するタイミング
  • 前進するためのスペースがない時(循環のパス)
  • 相手のプレッシャーラインを越えた後
  • 目の前のスペースに味方選手がいる時

最後に

今回は、「センターバックのドリブルでの前進」について話してきました。

この話を通して気づいてもらいたいことは「攻撃」の局面と「攻撃から守備への切り替え」の局面は、密接に関係しているということです。。

各局面には、さまざまん要素があり、それを基にプレーについて分析•改善をしていきます。ただし、サッカーは野球のように攻守の局面が明確化されているスポーツではなく、全ての局面が連続的に連動しています。

「相手のカウンターから失点してしまった。攻撃から守備への切り替えの時に、ボールを奪われた瞬間に、もっと相手にプレッシャーをすぐかけに行かなきゃダメだよ!」

と選手に言ったとしても、ボールを奪われた瞬間に、ボールを奪われた選手が孤立していては即時奪回を目指すことは難しいです。
*不可能とは言いません。

即時奪回をするためのオーガナイズできているのか、相手のカウンターを阻止できるオーガナイズになっているのか、これはチームがボールを持っている時から考えなくてはいけません。つまり、攻撃の局面です。

CB=自陣ゴールに最も近い位置でプレーする選手(GKを除く)です。

CBのポジションの取り方によって、攻撃から守備への切り替えの局面における状況は大きく変わってきます。

今回の記事で、それを理解していただければ幸いです。

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