サッカー

小学生年代のサッカー指導について考える

今回は、6歳〜12歳の小学生年代のサッカー指導について考えていきます。

今回は、スペインサッカー協会が開催する指導者講習会の内容をもとに話をします。
“スペインがやっていることだから必ず正解”
というわけではありません。

「スペイン=正解」という考えではなく、スペインはどのような理由でその考えに至っているのか、その理由を考えることが大事だと思います。その理由に正当性を感じることができなければ、スペインがやっているからという理由で安易に次チームに取り入れることは避ける方がいいでしょう。

ここからはその理由についても考えながら、小学生年代のサッカー指導について見ていきます。指導の1つの参考にしていただければ幸いです。

年齢の部類方法(カテゴリー)

まず最初に、具体的な話をする前に日本とスペインの年齢(カテゴリー)の分け方について見ていきます。

日本の場合、「第4種(小学生)」「第3種(中学生)」「第2種(高校生)」「第1種(社会人*大学生もここに含まれます)」、この4つに分かれます。

一方で、スペインの場合、より細かく年齢が分かれています。

  • 6歳〜8歳:プレベンハミン
  • 9歳〜10歳:ベンハミン
  • 11歳〜12歳:アレビン
  • 13歳〜14歳:インファンティール
  • 15歳〜16歳:カデーテ
  • 17歳〜19歳:フベニール
  • 19歳〜:アフィシオナード/セニョール

大まかにいうと、2世代ずつ年齢が分かれています。また、スペインの年代分けの場合、年齢ではなく、生まれた年の西暦によってカテゴリーが決まります。そして、各カテゴリーには各州のサッカー協会が開催するリーグ戦があります。
例えば、マドリッド州の場合、アレビンというカテゴリー内に5つのリーグが存在します。リーグ内にはいくつかのグループがあり、各グループが14〜16チームで構成されています。もちろん、昇格•降格•残留があります。

そして、年齢の分け方についてですが、例えば今シーズン(2022-2023)では、2011年と2012年生まれの選手がアレビンと呼ばれるカテゴリーに所属します。

今回は、この中の3つ、プレベンハミン(6歳〜8歳)、ベンハミン(9歳〜10歳)、アレビン(11歳〜12歳)について考えていきます。

*ちなみに、スペインの場合、アレビンという世代から7人制サッカーと11人制サッカーがあります。つまり、7人制のアレビンと11人制のアレビンがあります。アレビンになる前の2つのカテゴリーでは全て7人制サッカーであり、インファンティールというカテゴリーからは全てが11人制サッカーになります。

各カテゴリーの特徴

ここでは、各カテゴリーの選手にどのような特徴があるのかについて、スペインサッカー協会が打ち出す一般的な考え方について話します。

6歳〜8歳

この年代では、基本的に「自チームとボールの関係」で選手たちはプレーします。
つまり、相手チームについてまで考えることが非常に難しい年代です。

日本サッカー協会の場合、第4種(小学生年代)、特に小学校低学年については、まだ1個人とボールの関係で選手たちはプレーをすると考えています。

ここでの違いは、スペインの場合は「自チーム」、日本の場合は「1個人」としているところにあります。ただし、これは一般的な考え方なので、日本でもスペインでも考え方に違いはあると思います。日本の指導者でも、「自チームとボールの関係」と答える人もいれば、スペインの指導者にも「1個人とボールの関係」と答える人もいると思います。

このような中で、フットボールチャット(当サイト)では、この年代においては「自チーム」と「ボール」の関係であると考えます。
なぜか?

それは、サッカーはチームスポーツであるからです。

確かに、この年代でチーム•集団を意識することは非常に難しいことだと思います。一方で、私たちの行っているスポーツは、個人スポーツではなく、チームスポーツです。
相手チームを意識することまではしなくても、自チーム、自分には味方がいるということは、多くの子どもたちがサッカーを始めるであろうこの年代から、意識するようにしてもらいたいと考えます。

9歳〜10歳

この年代からは「自チームとボールの関係」に加えて、「相手チームとの関係」が含まれるようになります。

1つ前の年代で、チームスポーツであることを認識するようになったと考えます。この年代からは、よりチームとしてのアクションをトレーニングする機会が増えてきます。そして、自チームとしてのアクションに加えて、相手チームのことも考えるようになります。

ただし、この年代ではいきなり選手たち自身のみで、目の前に現れるフィールド上での問題を解決することは非常に困難です。そのため、指導者のサポートが必須になります。

フィールド上で起こる問題に対して、選手たちと一緒に解決していく姿勢を持つといいでしょう。プレーを止めて、状況を可視化して選手の理解を助けたり、簡単な質問を投げかけて解決策に導いていくという指導者側の選手たちへのアプローチが必要です。

11歳〜12歳

小学生年代最後の年であるこの年代からは、スペインの場合、7人制と11人制のサッカーが存在します。この年代は、7人制から11人制への移行期と言えます。

*2019年にマドリッドサッカー協会が発信したこの年代におけるビデオでは、アレビンという年代における1年目の選手(9歳-10歳)は7人制を継続することを前提に、選手登録などについてのルールを定めていると言っていました。例えば、11人制のアレビン年代のチームにおいて、1チームにおけるアレビン1年目の選手の最大登録人数を10人するなどです。

この年代からは、「自チーム、ボール、相手チームの関係」+「スペース」となります。

1個人、自チームの味方選手、相手選手とボールの関係だけではなく、サッカーにおけるスペースについて考えるようになります。この年代に至るまでにサッカーに関する基本的なテクニック、戦術についてある程度学んでいることが前提になってきます。その上で、いつ、どこに、どのようなスペースが生まれるのか、何をすることで、どうしてそこにスペースが生まれるのか、スペースとサッカーのプレーの関係について意識するようになります。

まとめ

ここまで話してきたことをもとに、「ボール保持」についての指導について考えて見ましょう。

以前、ボールを保持するために必要なことは?という記事の中で、ボール保持の基本的な考え方について話しました。
この時、当サイトでは「ボールを保持するためには、スペースを広くすることが大切だ」という話をしました。

では、このフレーズを使った指導は、3つの年代のうちどれに当たるでしょうか?
6歳〜8歳? 9歳〜10歳? 11歳〜12歳?

基本的な考え方では、11歳〜12歳の年代における指導になります。
なぜなら、スペースとサッカーのプレーとの関係性について話すことは、このこの年代からだと基本的には考えるからです。

では、9歳〜10歳の年代はどのような声掛け、指導が適切と考えられるでしょか?*この年代では、自チームとボールの関係に加えて、相手チームとの関係になります。

そのため、声掛けの例としては「相手にマークされていないフリーの選手を見つけてプレーしよう」となります。あくまでも例です。
この声掛けの特徴としては、「自チーム」「ボール」「相手チーム」について触れていることです。

これをもとに、選手にどのようにポジションを取るように伝えるかがポイントです。例えば、味方選手同士が同じところにいると、フリーになりにくいから相手選手からも味方選手からも離れてフリーになりやすい状況を作るように促すことなどです。
この時おのずと、スペースを広くすることにつながります。

では最後に、6歳〜8歳の年代ではどのような声掛けをするといいでしょうか?*この年代では、自チームとボールの関係です。

例えば、「ボールを持っている味方選手からパスを受けられる場所に移動しよう」と言った声掛けを考えることができます。
この声掛けの特徴は、「自チーム」と「ボール」についてのみ話していることです。
これを伝えた上で、他の味方選手がいないところでパスを受けらるところを探すように促すと、自然とスペースを広く使えるようになります。

このように、カテゴリー別の選手たちの一般的な特徴を踏まえて、指導者は我慢強く指導に務める必要があります。

各カテゴリーの指導の目安とポイント

でも、技術[テクニック]の習得は、小さい年代のうちにやったほうがいいと思うけど、どうなの?

このような疑問を持つ方もいると思います。
当たり前ですが、初めてサッカーボールを蹴るような選手に対して、パスはこうした方がいいだの、相手が来た時にはこうした方がいいだの、と言った話をすることはできません。なぜなら、その選手はボールをコントロールすることに精一杯で他のことに意識を向けることができないからです。
つまり、物事には順序があるということです。

しかし、一方で日本の場合、どの年代でもかなり高水準なテクニックが求められます。そのため、正確にボールを扱うことができるまでは、一才サッカーについて教えない指導者がいます。

繰り返しますが、サッカーはチームスポーツであり、どの年代であろうと、我々が行っているスポーツはサッカーです。ボールの扱い方だけを教えているようでは不十分といえます。

また、多くのサッカー指導者が周知の通り、ある学習に特化した年代が存在します。

そこで、これらのことを踏まえて、最後に各年代における「コーディネーション(フィジカル)」「技術•戦術」「サッカーのプレー」の3つのトレーニング要素のバランスについて簡単にまとめたものを紹介します。

*「サッカーのプレー」とは、チームとしてどのように戦うかということについて考えることです。例えば、相手のGKがボールを持った時に、チームとして具体的にどのようにボールを奪いにいくかです。一方で、「技術•戦術」における戦術とは、サッカーの基本となる戦術です。例えば、ボール保持についての考え方などです。これが具体的にどのポジションの選手がそのスペースを埋めるかという話になると「サッカーのプレー」についてのことになります。

6歳〜8歳 9歳〜10歳 11歳〜12歳
コーディネーション
(フィジカル)
40% 35% 25%
技術•戦術 50% 50% 50%
サッカーのプレー 10% 15% 25%

表からもわかるように、この年代における技術•戦術の習得は非常に重要なものです。
これをおろそかにしてしまうと、12歳より上の年代に移った時に、チームでのやり方について理解することが難しくなったり、競技レベルの向上についていくことが難しくなります。

そして、先ほども話しましたが、各年代にはある学習に特化していることがあります。体の基本的な動きに関しては、より幼い時期に取得することが推奨されています。そのため、全体のトレーニングにおけるコーディネーションの割合が高くなっています。
また、サッカーのプレーに関しては、年代が上になるにつれて割合が増えてきます。これは、年代が上になるにつれて、集中力を維持する時間と意識を向けることができることが増えるからです。

最後に

ここまで話してきたことは、1つの例であり、また1つの基準です。

9歳〜10歳の年代におけるコーディネーションの全体のトレーニングの割合が35%だからといって、必ず正確に35%をコーディネーションのトレーニングに当てる必要はありません。

今回の話を踏まえて、「ああ、この年代にはこう言った特徴があって、こういう考え方をした方がいいのか!」「じゃあ、もう少し今のチームでは、ここを意識しよう!」と言ったように、自分の考えを持つ時の1つの基準として捉えていただければと思います。

私個人的には、スペースに対する認知は11歳〜12歳まで待たなくても、もう少し前から認知することは可能なのではないかと考えています。これは、選手個人個人に差のあることでもありますので、現状の所属している選手をよく知ることが大事です。

最後に、今回の記事を読んでいただいた人に忘れないでもらいたいことがあります。

サッカーはチームスポーツであり、
それはサッカーをしている以上変わらない。

ということです。
ボールを扱うことだけではなく、サッカーについても指導していきましょう。

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  1. […] 以上のことから、基本戦術は、小さい子供の時から徐々に学んでいく必要があります。 この時注意してもらいたいことは、それぞれの年代に合わせた指導をすることです。これについては、別記事で話していますので参考にしてみてください。(小学生年代のサッカー指導について考える) […]

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