サッカー

攻撃から守備への切り替え【2対1/ 3対2】

局面についてのおさらい

まず最初に、「攻撃から守備への切り替え」について考え方を共有しておきましょう。

攻撃から守備への切り替えとは、自チームがボールを持っている状況で、相手にボールを取られた瞬間から守備へ移行するまでの局面のことを言います。

次に、この局面には大きく分けて2つのプレーがあります。

  • 即時奪回
    …ボールを失った後に、できるだけ早くボールを取り返すこと
  • 後退
    …ボールを失った後に、後ろに下がり相手チームの前進を遅らせること

この2つのプレーをさまざまなことをもとに判断します。

まずは、チームとしてどちらを優先するのか?
例えば、相手とのチームとしての実力の差が多く時、レアル・マドリードのような相手と試合をする時、多くのチームは「後退」を優先します。なぜなら、どれだけプレッシャーをかけてもレアル・マドリードの選手たちはそれを簡単にかわすからです。そうなるば、まず後退して、自陣後ゴールにより近いスペースを埋めようと考えるわけです。

次に、フィールドでの状況です。
例えば、攻撃から守備への切り替えの局面で、数的不利な場面を想像してみてください。具体的に言うと、2対3の場面です。(下図)

赤が攻撃、青が守備側です。攻撃から守備への切り替えで、このような状況があったとします。この時、ボールを持っている選手がドリブルで進んでサイドの選手にボールを出したします。これに対して守備側の選手がボールを積極的に奪いに行けば、相手に背後のスペースを与えてしまいます。
*これは、前回の「最終ラインから2番目の相手選手に飛び出すな!」で話した内容と同じですね。

そのため、数的不利な状況では「後退」を選択し、相手に背後のスペース(自陣ゴールにより近いスペース)を与えないようにしながら、味方選手が戻ってくる時間を作ります。こうすることにより、相手の前進を妨げ、守備の局面へと移動することできます。

このようなシーンは、プロサッカーの試合でもよく見ることがあると思います。一方で、まだサッカーを始めたばかりの選手たちであれば、例えば小学校低学年の試合などであれば、ボールをとにかく奪いに行って結果的に自陣ゴール前に誰もゴールを守る人がいないと言ったことが起こります。

このフィールドにおける基本的な判断、サッカーを教えることがサッカー指導者の役割•仕事です。

  1. 守備の局面における最初の目的とは「ボールを奪うことではなく、自陣ゴールを守ること」
  2. 「守備をする上での、守るスペースの優先順位は自陣ゴールに近ければ近いほど高いこと」

*参照:「守備において上で理解しておかなければいけないこと

ここまで、局面についておさらいになります。これが頭に入った前提で、具体的な例をもとに話をしていきます。

よくある練習

ここから、今回の本題に入っていきます。

具体的な例を紹介する前にまずは、攻守の切り替えにおいてよくある練習を紹介します。
このトレーニングメニューをもとに、具体例を紹介します。

トレーニングの進め方: 2対1➡︎3対2
*使うスペース: 11人制サッカーの半面(プレー方向は11人制サッカーと同様)
→7人制あるいは8人制の場合: 8人制サッカーの半面(プレー方向は11人制サッカー)

-スタートポジション: 青色の選手がスペースの真ん中に1人いる状況
➡︎ 2対1(左図): 赤の選手たちが下から上へ攻める
*守備はボールを奪ったら、相手のゴールへ攻める(1対2)
-赤の選手がシュートを打つもしくは、守備の選手がボールを奪ってシュートを打つ、あるいはボールがスペースから出た時にコーチが(笛or声)合図した時、青色の選手2人が上から下へ攻める。
➡︎ 3対2(右図): 最初の2対1でプレーしていた選手は続けてプレーする。
*青色チームがシュートを打つもしくは、赤色チームがボールを奪ってシュートを打つ、あるいはボールがスペースから出た時、プレー終了。次の選手たちのターンに移る。

このトレーニングは、縦長のスペースで行う必要があります。
なぜなら、攻撃側のプレーのスピードを加速させることと、それに対して守備側が後退するアクションを引き起こしたいからです。

また、ずる賢い選手になると、攻撃から守備への切り替えにおいて長い距離を走りたくがないためにゴールが決まるかどうか関係なく、相手ゴールから遠い位置(自陣ゴールにより近い位置)からシュートを打つ場合があります。
もしこのような場合、シュートラインを設定するといいでしょう。ある一定の位置までボールを運んでから出ないとシュートを打ってはいけないとするのです。
このようなルールを追加することなく、トレーニングができれば理想的ではあります。

先ほども言いましたが、攻撃側は時間をかけずに相手ゴールに向かう必要があります。つまり、加速する必要があります。
なぜでしょうか?

 

それは、相手の選手が戻ってきて数的同数になる前に、数的優位な状況で相手ゴールに攻めて、より簡単にシュートまで行くためです。

一方で、守備側はこれを防ぐことが目的になります。

2対1

いやでも、最初の2対1の状況では戻ってくるような選手はいないじゃん。

このように言う人がいるかもしれません。
これがポイントです。

2対1の状況で重要なことは、相手に背後のスペース(自陣ゴールにより近いスペース)を与えないことです。

じゃあなんだ、自陣ゴールまで下がり続ければいいって言うのか?
そしたら、相手にシュートチャンスを与えてしまうじゃないか!
本末転倒だ!

このように考える人がいるかもしれません。
しかし、ただ単純に下がればいいと言うわけではありません。

相手ボール保持者と一定の距離を保ちながら、後方に下がり、背後のスペースを与えないことがポイントです。この一定の距離というのは、相手がシュートモーションに入った時、相手がシュートを打ちそうになった時に、ボールに寄せることができる距離です。これを明確に○mということはできません。なぜなら、選手によって体の大きさ、足の長さ、ボールに寄せるスピードが異なるからです。

そして、次に出てくる疑問が「どこまで下がるのか?」ということです。

これは、ペナルティエリアの線を1つに基準にしましょう。

ペナルティエリアに相手に侵入されると、相手にシュートを決められる可能性が高まります。それは、単純に距離が原因です。
なので、ペナルティエリアに入られる直前に相手に体を寄せるあるいは、シュートブロックをする必要があります。もし仮にシュートフェイントをされて、もう1人の相手選手にパスを出されたとしても、ペナルティエリア内であれば、味方GKが相手との距離を縮めやすくなり、シュートコースを限定することができます。こうすることで、失点の可能性を下げることができます。

ここまで話してきたことはサッカーにおける戦術的要素です。
次に、この局面における技術的要素について話していきます。
後方に下がると言った時に、最初のうちは多くの選手がバックステップで、背中を自陣ゴールに向けながら下がろうとします。しかし、これでは素早く後方に下がることが難しいです。

以上のことから、後方に下がる際には半身の姿勢、体をやや斜めにした状態で後方に下がりましょう。ボール保持者に対してお腹を向け、背中もしくは肩をもう1人の相手選手に向けるイメージです。
これにより、相手のプレーを限定しながら後方に下がり、自陣ゴールにより近いスペースを相手に与えることを避けることができます。

半身の姿勢での後退には、2種類のステップがあります。
1つはクロスステップ、もう1つはサイドステップです。クロスステップは加速するために、サイドステップは自分のポジションを微調整する時に使うように意識するといいでしょう。クロスステップは、いきなりできることではありません。特に、小さい年代やサッカーを始めたばかりの年代では簡単ではありません。クロスステップの練習をすることも必要です。

7人制や8人制のサッカーであれば、2対1という状況は11人制サッカーに比べて、より頻繁に起こることだと思います。小学校低学年くらいから練習に取り入れていくことをお勧めします。ただし、より小さな年代でこのようなトレーニングをするときは、3対2は行わずに、2対1を交互に行うといいでしょう。
*最初に赤が2対1で攻めて、シュートしたらプレー終了。次は、赤の選手がスペースの真ん中に1人立って、青色の選手たちからスタート(2対1)。
こうすることで、トレーニングの複雑性が低くなります。

3対2

3対2の状況でも基本的には2対1の状況と同じです。

最初の2対1のプレーで、シュートを打つ選手とそれをシュートブロックする選手と、各チームそれぞれ1人ずつがペナルティエリアの近くあるいはゴールの近くにいます。
そのため、次の3対2を始めるとき、必然的に、シュートを打たなかった選手と次にプレーに参加してくる2人の選手によって2対1の状況が生まれます。

2対1の状況において、守備側が意識することについては先ほど話しました。
ここで最初の2対1の状況と変わることは、次にプレーに現れてくる選手がいるかどうかです。この選手とは、先ほどの最初の2対1の場面でシュートを打った選手とそれをシュートブロックした選手です。

2対1で話したことに加えて、ここで重要なことは、味方選手(上図の場合、赤色の選手)が相手の前進を遅らせている間に、シュートを打った選手が素早く自陣ゴールのある方向に戻ってくることです。こうすることで、2対2あるいは3対2の状況を作り出すことができます。

ここで一番に防がなくてはいけないことは、3対1の状況でゴールを守ることです。

3対1の状況では、相手のプレーを制限することは非常に難しいです。
しかし、3対2の状況であれば、相手のプレーを制限することは2対1の局面と同様のレベルになります。なぜなら、相手の数的優位が1人だからです。

2人での守備においては、1人の選手がボールに寄せたとき、もう1人の選手はその選手に寄るように、ボール方向に寄る必要があります。
この時、間違えないでもらいたいことは、自陣ゴール前のスペースを完全に空けてしまうことです。

冒頭の話に戻りますが、守備の目的は「ボールを奪うことではなく、自陣ゴールを守ること」です。ボールを奪うことは、守備という局面における1つの要素です。攻撃という局面に移るために必要なアクションではありますが、目的ではありません。
自陣ゴールを守りながら、相手のボールを奪うチャンスを作り出すのです。

だから、ボールを奪いたいからと言って、自陣ゴール前のスペースを相手に与えてしまうことは避けなければいけません。
上の図、右にあるように味方が相手ボール保持者にプレッシャーをかけたからと言って、他の相手選手にプレッシャーをかけたり、ゴール前を離れて味方のカバーに行ってはいけません。なぜなら、ボールを奪いにいくというアクションはリスクを伴うものであり、この場面におけるリスクとは、最も危険なゴール前のスペースを与えることだからです。

ボール保持者に対して味方がプレッシャーをかけに行ったときは、ゴール前のスペースを守りながらも少しボールがわに寄りましょう。そして、ゴール前にくるクロスに対しての守備の準備を行いましょう。

もし相手がサイドから中央の選手に対して、ボールを戻すようなことがあれば、元の位置に戻りましょう。*ゴール前にポジションをとっている時、中央の相手選手との距離が遠くなっていることが多いので、このような場合は相手ボール保持者との距離を縮めるようにしましょう。

最後に

日本では、「挟み込み」や「サンドする」などと言って、ボール保持者に対して数をかけて守備をすることを、選手たちに伝える指導者がいます。これは1つのやり方です。

ただし、この時考えなくてはいけないことがあります。
それは、ボール近く以外の状況です。サッカーは相手と数的同数で行うスポーツです。11対11、7対7、8対8、数的同数です。
もし相手ボール保持者に対して、2人の選手がボールを奪いに行った時、この時にはボール近く以外のところで数的不利が発生します。

このよう数的不利な状況を作ってしまえば、相手により簡単にプレーすることを許してしまいます。特に、これを自陣ゴール近くで行ってしまえば、失点につながりやすくなります。

サッカー指導者は、サッカーを教えるからサッカー指導者なのです。

選手たちに基本的なサッカーの考え方を教えてあげましょう。
今回話した内容は、その一つです。

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