今回の目標
「サッカーの基本を抑える」という記事の中で、サッカーには4つの局面があり、それぞれの局面にはいくつかの種類があることについて話しました。
しかし、これだけではサッカーの試合や練習の中で起こる現象を的確に把握することは難しいです。つまり、現象を把握し、分析し、問題を改善して行くためには、さらに詳しくサッカーを理解しなくてはいけません。
今回の目標は、サッカーのフィールドにおける特徴を理解し、サッカー理解をさらに深めることです。
サッカーのフィールド
図には、サッカーのフィールドにおけるいくつかの数値[ラインの長さ]を載せましたが、最も重要なことは以下のことです。
縦に長い長方形。
そして、それぞれのゴールライン中央に1つずつゴールがある。
縦105m、横68m[7人制もしくは8人制の場合、縦68m、横50m]の縦に長い長方形で、2つのゴールラインのそれぞれの中央に1つずつゴールがある、これはサッカーにおいて普遍的なことです。
*各グラウンドによっては、フィールドのサイズは多少異なります。ただし、縦に長い長方形です。そして、それぞれのゴールライン中央に1つずつゴールがあります。
当たり前なことですが、これが頭から抜けていれば、これから話す内容は全く理解できないしょう。
フィールドを横に2分割[自陣と相手コート]
まずは、フィールドを横に2分割してみましょう。
とても簡単です。
ハーフウェーラインを基準に手前を「自陣」、奥を「相手コート」とします。
まずは、簡単に2分割から考えてみましょう。
自陣とは、自チームのゴール[守るべきゴール]のあるフィールド半分のスペース。
相手コートとは、相手のゴール[得点するためのゴール]のあるフィールド半分のスペース。
当サイトでは、フィールドを図のように縦で見た時、手前側半分を「自陣」、奥側を「相手コート」とします。
こうする理由としては、「サイドバックが上がる」などの表現にあるように、攻撃方向は常に下から上へと考えるからです。
それぞれの特徴とその違い
自陣:リスクを冒さない・リスクを避ける
ボールを持っている時[攻撃]、守るべきゴールのある自陣では、できるだけボールを失うリスクを冒さないことが重要です。
なぜなら、自陣でボールを失うと、相手に、守るべきゴールから近い位置で攻撃する機会を与えてしまうからです。
また、ボールを持っていない時[守備]も同様です。リスクを冒さないことが重要です。
守備におけるリスクとは何でしょう?それは、後方のスペース[守るべきゴールに近いスペース]に相手に侵入されることです。詳しくは、「守備において理解しておかなくてはいけないこと」という記事で話しています。ぜひ、そちらも見てください。
攻守の切り替えにおいては、これを踏まえた上で、チームとして何をするのかを考える必要があります。
例えば、ボールを奪われた時[攻撃から守備への切り替え]、即座にボール奪還を目指すのか、それとも後退して守備を整えるのか、またボールを奪った時[守備から攻撃への切り替え]、安全なパスでボールを確実に繋げるのか、それともカウンターを狙って前に向かってプレーするのか、などなどです。
重要なことは、「自陣」の特徴を把握した上で、チームとしてあるいは、指導者としてコンセプトを持つことです。そして、それには根拠がなくてはいけません。
相手コート:チャレンジできる・相手ゴールを目指す
相手コートでは、自陣と異なり、リスクを冒すことができます。つまり、チャレンジすることができます。
なぜなら、守るべきゴール[自陣ゴール]から距離があり、ボールを奪われたからと言って、即失点につながるわけではないからです。
そして、何よりサッカーというゲーム・スポーツが「相手より多くの得点を取ったチームが勝つ」という以上、相手ゴールを目指さなくてはいけません。
なぜなら、自陣とは異なり、相手ゴールにより近い位置にチームがいるからです。
以上のことから、相手コートでボールを奪った時[守備から攻撃への切り替え]の最優先事項は基本的に「相手ゴールに素早く攻めること」となります。
*もちろん、状況によって判断を変えなくてはいけません。これについては、また別記事で話します。
また、忘れてはいけないことはリスクマネジメントです。
ボールが相手コートに侵入した時、チーム全体も相手コートへ近づきます。この時、後方にスペースを残すこととなります。
もしこのスペースのリスクマネイジメントをしていなければ、ボールを奪われた瞬間に相手のカウンターを受け、一気に自陣まで攻め込まれてしまいます。
ボールを奪われた時に即時奪回を目指すのか、それとも後退して後方のスペースを狭めるのか、リスクマネイジメントの仕方には種類がありますが、チーム・指導者としてこれらのことを考えなくてはいけません。
注意しなければいけないことは、自陣でのプレーとは異なり、相手コートはチャレンジすることができるスペースである一方、チームの後方にはスペースを残しており、それを管理[マネイジメント]しなくてはいけないことです。
フィールドを横に3分割[ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3]
次に、フィールドを3分割にして、フィールドの特徴をより詳しく確認していきましょう。
サッカーの現象を把握する上で、フィールドを2分割した方がわかりやすい時と、2分割だけでは不十分な場合があります。そのためにも、3分割した時のフィールドの特徴を把握しておくべきです。
ゾーン1:自陣ゴールを含むゾーン
ゾーン1の特徴は、先ほどの“フィールドを横に2分割した時”の自陣の特徴と同じです。
つまり、
リスクを避ける
ということが大事になってきます。
ここでさらに、1つ情報を付け加えます。それはルールに関してです。
①現状のサッカーのルール[競技規則]では、ボールを持っているチーム[攻撃側]がゴールキックでプレーを再開する時、あるいはペナルティーエリア内からプレーを再開する時[ファールやオフサイド]、相手守備選手はペナルティーエリアに侵入することができません。
②オフサイド。
ゴールキックからプレーを再開する時、オフサイドはありません。そして、守備チームが相手コートに全員入っている状況ではハーフウェーラインがオフサイドラインとなります。
これらのルールもこのゾーンの特徴です。
ボールを持っている時[攻撃時]は、このゾーンを「ビルドアップ」のためのゾーンと当サイトでは認識します。
一方で、ボールを持っていない時[守備時]は、このゾーンにいれば「低いブロック」と認識します。
ゾーン2:フィールド中央のゾーン
これが先ほどの“フィールドを横に2分割した時”との大きな違いです。
このゾーンの特徴は、相手のゴールからも自陣のゴールからも離れたゾーンだということです。つまり、唯一、ゴールのないゾーンなのです。
当サイトでは、ボールを持っている時[攻撃時]は、このゾーンを「前進」するためのゾーンと認識します。
一方で、ボールを持っていない時[守備時]は、このゾーンにいれば「中盤のブロック」と認識します。
また、ルールに関して付け加えるべきことがあります。
それは
攻撃側にも守備側にもオフサイドがある
ということです。
このことから、両チームともにスペースを後方に残しているので、GKを除いた両選手合計20名がこのゾーンに密集している形となります。
つまり、3つあるゾーンの中で最も人が密集しやすいゾーンと言えます。
ゾーン1も3も、GKを除いた両選手合計20名が入ることはまずありません。
ゾーン3:相手ゴールを含むゾーン
ゾーン3の特徴は、先ほどの“フィールドを横に2分割した時”の相手コートの特徴と同じです。
つまり、
チャレンジできる・相手ゴールを目指す
ということが大事になってきます。
当サイトでは、ボールを持っている時[攻撃時]は、このゾーンを「フィニッシュ」のゾーンと認識します。
一方で、ボールを持っていない時[守備時]は、このゾーンにいれば「高いブロック」と認識します。
そして、このゾーンはゾーン1と対になっています。
相手のペナルティーエリア内からのプレーの再開時、プレーが再開するまで、相手ペナルティーエリア内へボールを奪いに行くことができません。
また、自チーム全体が相手コートに入っている場合、ハーフウェーラインがオフサイドラインとなります。つまり、相手のプレーするスペースを狭めたいからといって、全員がゾーン3へ奪いにいけば、相手コート内のハーフウェーライン付近にスペースを与えてしまい、相手コート内であれば、オフサイドが適用されません。
当たり前のことです。
ただし、これもゾーン3の特徴の1つです。
まとめ
- ゾーン1:自陣ゴールのあるゾーン
攻撃「ビルドアップ」
守備「低いブロック」 - ゾーン2:フィールド中央のゾーン
攻撃「前進」
守備「中盤のブロック」 - ゾーン3:相手ゴールのあるゾーン
攻撃「フィニッシュ」
守備「高いブロック」
フィールドを縦に何分割するのか?
ここまで、フィールドを横に分割してきました。
では、縦にはどう分割するでしょうか?
2つ?
(フィールドをセンターマークを基準に縦に半分にする。)
3つ?
(縦に3等分もしくは、中央を少し大きめに取り、サイドを少し小さめにする。)
4つ?
(フィールドをセンターマークを基準に縦に半分にし、その半分をさらに半分にする。)
5つ?
(縦に5等分にする)
当サイトでは、最低限、中央と両サイドがわかればどれでもいいと考えます。
つまり、3つにさえ分かれていれば問題ないということです。
なぜなら、サッカーのルールから考えて、それ以上に考える必要がないからです。
3つなのか、4つなのか、5つなのか、どれでも構いません。
ただし、サッカーにはタッチラインが存在します。
タッチラインのあるゾーンとそれがないゾーン、つまりサイドと中央にさえ分かれていれば問題ありません。
と聞かれたら、次のように答えます。
例えば、サイドチェンジだけを言いたいなら、3つに分けるだけで十分かもしれません。
中盤の選手にボールに寄る選手とボールから離れる選手を説明したければ、4つに分けた方がいいかもしれません。
CBとサイドバックの選手の間のスペースを説明したければ、もしかしたら5つに分けた方が伝えやすいかもしれません。
要は、何を説明したくて、選手が理解しやすくするためにはどのように伝えたらわかりやすいかということです。
私はこれまで、スペインで合計4人の監督のもとでチームのスタッフとして働いてきました。ある監督3つ、ある監督4つ、ある監督は5つに分けていました。時には、その全てを使うこともありました。
ただ、それはそうした方が選手に、こちらの考えを伝えるためにより良いと考えたからです。
基本は3つで、必要な時にはさらに分けるくらいの考えを持っていればいいと思います。
「海外はファイブレーン」なんてことはありません。
ただし、5つより多く分けることは、複雑になりすぎるためお勧めできません。
最後に
サッカーの現象を把握する時、大事なことはよく言われる5W1Hです。
つまり、
いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように
と言ったことを考えると、現象を把握しやすくなるということです。
この中の、“どこ”に注目したとき、今回ここまで話してきた内容が役立ちます。
チームの改善は、まず現象を抑えることから始まります。
そして、それを分析し、問題点を明確にし、トレーニングやコーチングで改善することとなります。
この一番最初の過程を間違えてしまえば、連鎖的に全てがうまく行かなくなります。
当サイトで説明する内容は、一見当たり前のことかもしれません。
しかし、この基本のきがものすごく大切なのです。
そして、その基本を頭ごなしにインプットするのではなく、しっかりと根拠を持って頭に入れることが重要です。