守備から攻撃への切り替えの練習【続編】
今回は、前回の「ミニゴールを使った守備から攻撃への切り替えの練習」の続編として、ミニゴールを使わない練習メニューを紹介します。
前回の記事の最後にも話しましたが、さまざまな理由からミニゴールを使った練習ができないことがあります。
例えば、ミニゴールを4つも持っていない、それを代用するコーンもないと言った道具のない状況です。また、コーンでミニゴールを作ることはできるが、シュートが決まった後にボールを取りに行ってくれるアシスタントコーチがいないと言った状況です。
私が参加しているスペインで開催されているサッカークリニックでは、3つのカテゴリーに分かれて、それぞれに1人の指導者がついて練習を行います。この時、全体で用意されているミニゴールの数は2つです。また、コーンは十分にありますが、各グループ指導者が1人なので、コーンでミニゴールを作った時、ボールを集める時間を作る必要があります。
道具がないことで十分なトレーニングができないこともありますが、ないものを言っても仕方がないので、あるものを使ってどのようにトレーニングしていくかについて考えます。
今回、使う道具は以下のものです。
- サッカーボール
- マーカー
- *フラットマーカー
これは必須ではありませんが、あれば選手の認識の助けとなります
前回の復習
前回の冒頭では、守備から攻撃への切り替えについて復習をしましたが、今回は前回話したことについてのみ復習していきます。
前回話したことは、「守備から攻撃への切り替え」の練習における練習段階についてです。
これには、3つの段階があります。それをここで復習しておきましょう。
- ボールを奪ったゾーンから出す
- 方向付けを行う
- プレーの判断
まずは、「ボールを奪ったゾーンから出す」といことが最初の段階でした。
ボールを奪った瞬間には、その近くに相手選手が多くいます。相手の即時奪回を避けるためには、ドリブルよりパスを使うことによってボールを奪ったゾーンから素早く出すことが必要です。
次に、ボールを奪ったゾーンから出せるようになったら、「方向付けを行う」と言うことを意識していきます。守備から攻撃への切り替えの局面において優先されることは「安全なパス」より「カウンターアタック」です。
そのため、まずはボールを奪った後に相手のゴール方向へボールを運ぶ意識をつけることが必要です。
最後の段階として、必要になってくることが「プレーの判断」です。
守備から攻撃への切り替えの局面には、2つのプレー「カウンターアタック」と「安全なパス」があります。
いつ、どのような状況で、どちらのプレーを選択する必要があるのかと言うことについて最後に抑えていきます。
これを踏まえて、練習メニューの例を見ていきましょう。
ミニゴールを使わない練習の例
ここから、今回の本題に入ります。
ミニゴールや、コーンを用いたゴールを使わずに、守備から攻撃への切り替えの練習を行います。今回も、前回と同様に3つのトレーニングメニューを紹介します。各段階に応じて1つずつメニューがあるので、参考にしてみてください。
*今回紹介するメニューでは、参加する選手の人数を10人としていますが、これには2つ理由があります。
1つは、前回と同様の人数で紹介をしてみたかったといことです。
もう1つは、図の見やすさを考慮したことです。
しかし、同じような形のトレーニングでも、人数を増やして行うことが可能です。
①ボールを奪ったゾーンから出す
大きなグリッドの中に小さなグリッドのあるボール保持。
進め方:
最初、小さなグリッドの中で、4対2のボール保持。
*このボール保持は、小さなスペースで行う。攻守の切り替えを引き起こしやすくすることが目的。
最初のボール保持でボールを奪ったら、外にいる選手にパスを出す。➡︎大きなグリッドの中でボール保持。【6対4】
ポイント:
-ボールを奪ったら、素早くボールを奪ったゾーン[小さなグリッド]からボールを出す。
-攻守の切り替えが起きた時の周りの選手のアクション。
➡︎パスコースを作る。
②方向付けを行う
グリッドの各角(かど)に1人ずつフリーマンを置くボール保持。
進め方:
ボール保持は、常にグリッドの半分で行う。【5対3】
攻撃側が10本以上パスを回した時もしくは、守備側がボールを奪ったら、反対サイドの2つの角のどちらかのフリーマンにパスを出して、反対サイドへ移動。➡︎同様に5対3のボール保持を行う。
ポイント:
-ボールを奪ったら、ボールを奪ったゾーン[グリッドの半分]からボールを出す。
➡︎反対側にフリーマンがいるので、ボールを外に出しやすい。
また、角にフリーマンを置く理由は、ボールを奪ってカウンターアタックをする時、相手の守備は中央を閉じるので、ボールを奪った後、サイドを意識することが大事だから。
前方かつサイド=角。
-ボールが移動した後のアクション
➡︎守備から攻撃の切り替えにおいて、前進し続けるためには、サポートが必要。ボールの移動とともに、チーム全体が一緒に移動することが大事。
守備側も同様。相手の前進を防ぐためには、素早くボールにプレッシャーをかけボールを奪い返す[即時奪回]をするか、守るべきスペースのある方向へ「後退」する必要がある。
このトレーニングでは、まず即時奪回を目指す。その上で、プレッシャーをかわされ反対のゾーンへボールが移動した時には素早くボールのある方向へ「後退」する。
③プレーの判断
縦に長い四角形を3つのゾーンに分けた状態でのボール保持。
手前と奥のゾーンのスペースは同じ広さ、真ん中のゾーンは四角の真ん中から2.5m[合計5m]の間のスペース。
*この真ん中のスペースを作る目的は、必ずフリーマンを除く全ての選手にボールのあるゾーンに移動するアクションを促すこと。もし、このスペースがなければ、真ん中で体の向きだけを変えて動かない選手が出てくる。
進め方:
フリーマンを手前と奥のライン上に2人ずつ置く。
ボール保持は常に両端のゾーンの内、ボールのあるゾーンで行う。
攻撃側は、パスを10本以上つないだら反対のゾーンへボールを運ぶことを目指す。一方で、守備側はボールを奪ったら、2つの選択肢がある。
1つは、反対のゾーンへボールを運ぶこと、もう1つはボールを奪ったゾーンでボールを保持し、10本以上パスをつないでから反対のゾーンへボールを運ぶこと。
攻守の切り替えが起こった時に、相手が反対のゾーンへのパスコースを防ぎ、前進を防ぐ時反対のゾーンへボールを無理に運ぶのではなく、ボールを保持してから前進を試みる。
ポイント:
-プレーの判断
➡︎「カウンターアタック(反対ゾーンへボールを運ぶ)」もしくは「安全なパス(ボールを奪ったゾーンのフリーマンと共にボールを保持する)」かの判断。
*注:「安全なパス」を選択した際に、忘れはいけないことは「ボールを奪ったゾーンからボールを出すこと」。このトレーニングの場合、相手のプレッシャー[即時奪回]を交わすことが重要。相手が前進を防ぐのであれば、ボールを奪ったゾーンのフリーマンを活かす。なぜなら、数的優位が生まれやすい場所だから。
-ボールが移動した後のアクション
➡︎先ほどのメニュー②と同様。
攻撃側はボールが反対のゾーンへ移動したとき、ボールの移動とともに、チーム全体が一緒に移動すること。守備側は、まずボールを失ったゾーンで即時奪回を目指す。その上で、プレッシャーをかわされ反対のゾーンへボールが移動した時には素早くボールのある方向へ「後退」する。
最後に
前回の記事を含め、2回に渡って守備から攻撃への切り替えの練習メニューを紹介しました。
紹介したメニューの参加人数は全て10人を前提に作ってありますが、人数を増やして行うことも可能です。
例えば、GKも含めて22人いる場合、今回のメニュー③を行うとします。この時まず、最後のゲームのチーム分けを考えます[2チーム]。その上で、フリーマンをGKとCBにします。GKは常にフリーマン、CBは時間でローテーション。グリッド内でプレーする選手はゲームのチーム分けをもとにします。
もし仮に、GKとCBの2人のフリーマンだけではボールを保持する力がなければ、各チームから1人ずつフリーマンを出し、グリッド内に配置します。
➡︎【8対8+4フリーマン+2フリーマン(逆サイド)】
チームの人数・レベルなどの状況に応じて、変更してみてください。
次回は、カウンターアタックにおける3対2のシュチュエーションについて話していきます。
2022カタールW杯において、攻守の切り替えの重要性がより顕著になったと思います。ボール保持率が低くても、カウンターアタックから相手ゴールを脅かすチームがたくさんあります。そのため、時事的な意味から「守備」と「守備から攻撃への切り替え」についていくつかの記事を連続して紹介しています。
サッカーには4つの局面がある。そして、この全てが大事である。
これを忘れずに、練習について考えていきましょう。