日本人選手が使う言葉
ありがたいことに、私は日本でもスペインでも日本人選手に対して指導する機会を与えていただいたことがあります。
日本では、いくつかのサッカースクールと母校での指導経験があり、またスペインではマドリッドに遠征に来た日本人選手・日本人留学生にトレーニングをした経験があります。
これらの経験の中で、気づいたことがあります。
それは選手間のコミュニケーション不足です。
もちろん、日本人選手の全員が全員そうではないと思います。
ただ、私がこれまで指導させていただいた日本人選手たちは、出身もプレーしている地域もレベルも、それこそ年代も異なります。
それでも、彼らに共通して足りないと思ったことは、コミュニケーションです。
きっと多くの指導者が、経験したことがあると思います。
練習中に選手たちが、全く声を発せず静かにトレーニングする場面を。
また声が聞こえてきたと思ったら、トレーニングとは関係のないこと、ましてやサッカーにも関係のない話をしているなんてことも。
特に年齢の低い選手とのトレーニングで頻繁に起こることです。
もしトレーニング中、選手から全く声が出ていなければ…
「おい!声が出てないぞ!やる気あんのか!」
「もっと声出していこう!」
もしトレーニング中、練習とは関係のない話をしている声が聞こえたら…
「無駄な話をするな!練習に集中しろ!」
多くの指導者がこのような声をかけるでしょう。そして、日本人選手の多くはそれに従ってくれます。
そして、選手たちが声を出し始めたと思ったら…
これは、コミュニケーションとは言えません。
文句であり、サッカーをプレーする中で役立つものではありません。
なぜ選手たちは声を出さないのか?コミュニケーションを取らないのか?
サッカーに必要なコミュニケーションとは何のか?
今回は、「サッカーにおけるコミュニケーション【選手編】」、サッカー選手に求めらるコミュニケーションについて話をしていきます。
コミュニケーションとは?
まずは、「コミュニケーション」のそもそもの意味を見ていきましょう。
コミュニケーション
1 社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと。言語・文字・身振りなどを媒介として行われる。「―をもつ」「―の欠如」
2 動物どうしの間で行われる、身振りや音声などによる情報伝達。*参照:goo国語辞書
つまり、コミュニケーションは「意思や感情、思考を情報として伝達し合うこと」と言えます。
ここで、改めて質問をします。
なぜ選手たちは声を出さないのか?なぜコミュニケーションを取らないのか?
声を出すことが恥ずかしいからでしょうか?それもあるでしょう。
しかし、一番の原因は、コミュニケーションの必要性を感じていないからでしょう。
コミュニケーションを取ること、情報を伝達することは味方を助けることにも繋がります。
日本はでは「気遣い」や「思いやり」といった言葉にせずとも、相手の意思をくみとることが良いこととされています。
しかし、サッカーというスポーツにおいて、相手の意思をくみとろうとする時間はありません。
情報を声に出して伝えた方が圧倒的に早いです。
また、コミュニケーションを取らずにプレーしている時、私たち指導者は次のように考えます。
“この選手は、プレーに余裕がない。考えを持ってプレーをしていない。周りが見えていない。”
なぜなら、周りを見て、状況を把握し、考えを持ってプレーをしていなければ、コミュニケーションを取ること、情報を発信することはできないからです。
コミュニケーションは、最も早い情報伝達。
サッカーにおいて、コミュニケーションの有無は、選手の能力を判断するものの1つ。
以上のことから、コミュニケーションの重要性を理解していただけたかと思います。
サッカーに必要なコミュニケーション
次に、サッカーに必要なコミュニケーションについて話していきます。
コミュニケーションは、本来どこでも行われることです。
例えば、親子間のコミュニケーション、夫婦間のコミュニケーション、友達とのコミュニケーション、さまざまな関係性のもと、多くの人と日常的に意思の伝達が行われています。
そこで、今回は“サッカー”にフォーカスして話を進めていきます。
先ほど、まとめたように、コミュニケーションとは「情報伝達」です。
では、サッカーをプレーしている時、必要な情報とは何でしょうか?
細かい説明は後にして、サッカーで最低限必要なコミュニケーションのフレーズをリストで見ていきましょう。
これらのフレーズは、スペインで、サッカーをしている時に使われるものです。
もしスペイン語にも興味があれば是非、色のついていない箇所も見てみてください。
*使われているスペイン語の単語には直訳とは異なるものがあります。サッカーの現場でのみ使われる表現もありますので、ご注意ください。
今回、注目していただきたいところは、色のついている箇所のみです。
最低限、これらのフレーズを使うことができなければサッカーでコミュニケーションを取ることは難しいです。
チームやクラブによっては、「言語化」をテーマに独自の言葉を用いているところもありますが、今回のリストで紹介したものは独自性のないもので、誰もがすぐに使えるように作ってみました。ぜひ、今日から使ってみてください。
話を戻します。
サッカーをプレーしている時、必要な情報とは何なのか?
それは、味方を助ける情報。そして、チームを助ける情報です。
例を図とともに見てみましょう。
あなたは四角の中の青の選手です。ボールを持っている選手[青]から、ボールを受けようとしています。
あなたの近くには相手選手[四角の中の赤]がいます。
質問です。
この時、どちらの選手が四角付近の状況を見やすいでしょうか?
ボールを持っている選手ですか?それとも、ボールを受けようとしている選手ですか?
ボールを持っている選手です。
なので、「情報伝達」をする選手はこの選手になります。
もし相手の選手が、プレッシャーをかけてこなければあなたはターンすることができます。なぜなら、フリーの状況でボールを受けるからです。しかし、もし相手の選手がプレッシャーをかけてくれば、ボールをはたくべきです。
パスを出す時、ボールを受けるあなたに対して、この選手は「フリー」「ターン」もしくは「はたけ」「来てるぞ」と情報を伝える必要があります。それをもとにあなたはプレーを判断します。
確かにそうです。
だから、選手間に必要な情報[コミュニケーション]は味方・チームを助けるものなのです。あなたのプレーを決めるものではありません。
あなたより周囲の状況が見えている選手が、情報を与えます。しかし、最終的にプレーを決めるのはあなた自身です。
自チームの選手のレベルが上がれば、相手チームのレベルも上がるはずです。
攻撃時であれば、相手はあなたが判断するための時間とスペースをより削ってきます。状況によっては、首を振っている時間などありません。この時、コミュニケーションが役立ちます。
また、守備においては後方にあるスペースを守る時、後ろの状況をいちいち確認することはできません。この時、コミュニケーションが必要になります。
後者の方が、より馴染みがあるかもしれません。
最後に
コミュニケーションは、最も早い情報伝達。
サッカーにおいて、コミュニケーションの有無は、選手の能力を判断するものの1つ。
サッカーにおけるコミュニケーションの重要性を、今回の記事を通して少しでも感じていただければ幸いです。
「あの選手は考えてプレーしている」
「あの選手は何も考えていない」
これらのことを指導者の主観ではなく、選手から発信されるものを通して、その選手を評価すべきです。なぜなら、そこには主観ではなく、客観的な評価があるからです。
これがまず指導者にも選手にも理解してもらいたいことです。
繰り返しますが、選手がフィールド上でサッカーをプレーしながら、コミュニケーションが取れるか、情報発信できるかどうかは、その選手の能力を判断・評価する1つの指標です。
どんなに考えてプレーしてようが、それを情報として発信することが必要です。
なぜなら、サッカーはチームスポーツだからです。個人で行うものではありません。
リストにのっているフレーズの内、1つでも今日から使ってみてください。