サッカー

守備から攻撃への切り替えを考える

まずは復習!

今回はサッカーの4つの局面の最後、「守備から攻撃への切り替え」について考えていきます。

プレーの種類

まずは、前回と同様に、「守備から攻撃への切り替え」の局面におけるプレーの種類を復習しましょう。

  • カウンターアタック
    …ボールを奪った後に素早く相手ゴールに向かうこと
  • 安全なパス
    …ボールを奪った後に、確実にボールを繋ぐこと

カウンターアタックは、世間一般で言う“カウンター”です。
カウンターではなく、カウンターアタックと表記しているのは、スペイン語でカウンターを“コントラアタケ(CONTRAATAQUE)”と言い、それを直訳した方が個人的に馴染みがあるからです。
正直、呼び名に強いこだわりはありません。カウンターと覚えていただいても何の問題でもありません。

次に、安全なパスです。
これは日本サッカーではあまり馴染みのない言葉だと思います。
この呼び名もスペイン語が由来です。スペイン語では“アセグラール(ASEGURAR)”や“パセ・セグロ(PASE SEGURO)”と呼ばれいます。アセグラールの直訳は、(ボールを)確保する、パセ・セグロの直訳は、安全なパスとなります。
つまり、ボールを失うリスクを冒さずに、確実にボールを保持することを意味します。

 

攻撃と守備の局面から考える

前回も言いましたが、「攻守の切り替え」と言う局面は「攻撃」と「守備」の局面を瞬間的に含むものです。そのため、この2つの局面の特徴・やるべきことについても考えなくてはいけません。

攻撃では「スペースを広くする」、守備では「スペースを狭くする」、これがそれぞれの局面でやるべきことです。これは、攻撃においてコンビネーションプレーであろうが、ダイレクトプレーであろうが、守備において高いブロック、中盤のブロック、低いブロックであろうが変わりません。

つまり、守備から攻撃への切り替えで重要なことは
「狭くなっているスペースを広くする」と言うことです

 

スペースを広くするとは?

「スペースを広くする」を理解することは簡単なようで、いろいろなことを考えなくてはいけません。

人が広がれば良いんでしょ?

まさにそれが一番に考えるべきことです。

ですが、「人が広がる」だけでは十分ではありません。

重要なことは、

ボールを奪ったゾーンからボールを出す

と言うことです。
つまり、ボールの動くスペースを広くすると言うことです。

例を図とともに見ていきましょう。

私たちは青チームです。相手チーム赤から、四角で囲われたスペースでボールを奪いました。[左図]

守備から攻撃への切り替えにおいて重要なことは、「スペースを広くすること」、そして、「ボールを奪ったゾーンからボールを出すこと」でした。
右図を見てください。3つの選択肢を図で示しました。
順に説明します。

①…後方への「安全なパス」
この時、ボールを受ける選手(CB)がボールを奪った後にスペースを作るために広がることが重要です。

②…近くにいるフリーの選手を活かしてボールをゾーンから出す
ボールを奪った瞬間には、ボールを奪った選手の近くに相手選手が必ずいます。
ここで、無理に個人でボールをキープしようとすると、ボールを失う可能性があります。ドリブルではなく、パスで近くの選手につなぎ、ボールを奪ったゾーンから離れます。

③…前方へのパス「カウンターアタック」
ボールを受けた選手がフリーで前を向ける状態の時、周りの選手が前方に走り、前方にパスコースを作ります。パスコースが生まれることは、チームとしてのスペースが生まれることを意味します。

カウンターアタックをするにしても、ボールを失っては攻撃できません。なぜなら、攻撃とは「ボールを持っている」局面だからです。また、ボールを持っていない状況では、当たり前ですが相手ゴールにシュートを決めることはできません。

ここで言いたいことは、「カウンターアタック」であっても「安全なパス」であっても、ボールを奪ったゾーンからボールを出すことが重要であり、またそのためにはスペースを広くすることが必要だと言うことです。

まとめ

守備から攻撃への切り替えで重要なことは、狭くなっているスペースを広くすること。
なぜなら、この局面では、ボールを奪ったゾーンからボールを出さなくてはいけなくて、そのためにはスペースを広げることが必要だから。

 

いつ、何を選択するのか?

ここからは、どのような状況でカウンターアタックができ、どのような状況で安全なパスが望ましいのかについて考えていきます。

サッカーをしている人からしたら当たり前かもしれませんが、
「カウンターアタック」ができる状況は、相手の守備が整っていない時です。

逆に言えば、相手の守備が整っていれば、カウンターアタックをすることはできません。つまり、この時選択するものが「安全なパス」となります。

ただし、重要なことは“この局面で何をもって相手の守備が整っているかどうかを判断するのか”と言うことです。

その判断基準は、ズバリ…

前方にスペースがあるかどうか

これにつきます。

これも攻撃と守備の2つの局面から考えていきましょう。

攻撃の局面で重要なことは、プレーするためのスペースを確保することです。
だから、攻撃ではスペースを広くすることが必要なのです。
一方、守備の局面では、攻撃側にプレーするためのスペースを与えないことが重要になってきます。そのため、守備ではスペースを狭くすることが必要になります。

そして、カウンターアタックと言うプレーは前方へのプレーになります。
つまり、相手ゴール方向へのプレーです。

以上のことから、ボールを奪った時、あるいはボールを奪ったゾーンからボールを出した時に、前方にスペースがあるかないかによってプレーを選択します。
この時、もし前方にスペースがあれば「前進できる」、もし前方にスペースがなければ「前進できない」となります。
下に、図にまとめたものを載せます。頭の中を整理するために活用してください。

 

安全なパス

安全なパスは、相手のプレッシャーを回避すれば、攻撃への局面となります。

相手のプレッシャーを回避した基準とは何ですか?

説明します。
私たちがボールを奪った時、相手チームは対照的に「攻撃から守備への切り替え」の局面を迎えます。つまり、相手のプレーは「即時奪回」と「後退」の2択となります。
この内、相手が「後退」を選択し、かつ私たちがカウンターアタックを継続できない状況になった場合、攻撃の局面へと移行します。

カウンターアタックが継続できない状態とは?
前方にスペースのない状況になった時です。相手が後退し、私たちのプレーを遅らせ、攻撃していた相手チームの選手が戻ってきて、スペースを狭められた時です。
この時、私たちはカウンターアタックをやめ、安全なパスから攻撃への局面へ移行します。

日本の学生サッカーを見ていると、ボールを奪った後相手コートに侵入したら、必ず相手ゴールまでいこうとします。意識としては、素晴らしいと思いますが、これは相手の守備が整っていない場合、つまり前方にスペースがある場合にのみ良しとされる判断です。
ボールを持っている選手の周辺に3人、4人の相手選手がおり、かつボール周辺で数的不利になっているのにも関わらず、カウンターを続けようとすることは正しい判断とは言えません。
多くのチームがこの判断をできていないことが、「日本サッカーにはパウサ[休憩]がない」と言われる原因の一つと言えます。
なぜなら、相手の守備が整っている、前方にスペースがない状況にも関わらず相手の守備ブロックに突っ込めばボールを奪われてしまいます。そして、相手チームも同様のことをしてしまえば、ボールを奪って奪われてが連続的に起こり、プレーに休みがなくなるからです。

間違えてないでもらいたいことは、「安全なパス」は必ず後方へのパスではないと言うことです。安全なパスとは、確実にボールをつなぐリスクのないパスです。
多くの場合が後方へのパスですが、必ずと言うわけではありません。場合によっては、横パスまたは縦パスの場合もあります。どこに確実にフリーな選手がいるかどうかによってパスの方向は変わります。

カウンターアタック

最後に、カウンターアタックについてもう少し詳しく説明させてください。

何度も言いますが、カウンターアタックは前方にスペースがある時にのみ可能です。

ここで重要なことは、人ではなく、「スペース」だと言うことです。

もちろん、前方へのスペースに走り込む人・プレーできる人がいなければいけません。
しかし、これを「前方に味方がいる時」とした場合、意識的にパスが人に対して、つまり足元へのパスのみになってしまう可能性が高くなります。

重要なことはスペースが相手ゴール方向にあるかどうかです。

その上で、最後に言いたいことは、カウンターアタックを成功させるポイントです。

まず、カウンターアタックにおける成功とは何か?
それは、相手ゴール付近までボールを運び、相手ゴールへシュートを決めることです。

そして、それを実現させるためのポイントが以下のことです。

  1. できる限り素早くプレーする
  2. 前方のスペースへボールを運ぶ
できる限り素早くプレーする
「できる限り素早くプレーする」?当たり前でしょ!

では、できる限り素早くプレーするために何をしますか?
これが重要です。
そして、この時考えてもらいたいことが、「ドリブル」と「パス」についてです。

考えてもらいたいことは簡単です。
どちらが早いですか?ということです。

基本的にはパスの方が早いです。
1対1で時間をかけるのではなく、パスを出して動くことが大事になってきます。

前方のスペースへボールを運ぶ

次に、「前方のスペースへボールを運ぶ」、このことについて考えてみましょう。
これも当たり前のことだと思います。
しかし、もう少し考えてみましょう。

これについて考えることは大事です。
なぜなら、先ほどできる限り素早くプレーするためには“パス”を選択した方が良いと言いましたが、その例外について知ることができるからです。

①では、前方のスペースへボールを奪った選手がドリブルをします。
②では、前方のスペースへ走り込む味方に対して、スペースへパスを出します。
③では、②と同様ですが、ボールを奪った位置からより遠くの位置へパスを出します。

結論から言うと、3つ全てがカウンターアタックを成功させるポイントを実行しています。
ただし、細かい違いがあります。

①のケースでは、ボールを奪った選手が顔をあげた時、前方に走り出す味方選手が相手選手より後方にいることを想定してください。この場合、前方のスペースへパスを出しても相手選手にボールを奪われてしまう可能性が高いです。
ですので、ボールを奪った選手は前方のスペースへドリブルでボールを運びます。
そして、もし仮に相手が近づいて来ればその時に走り込む選手に対して、前方のスペースへパスを出せば良いのです。逆についてこなければ、前進を続けるだけです。
これがパスではなく、ドリブルを選択するケースの例です。

一方で、②と③のケースでは、相手選手より味方選手の方が前方に出すパスに対して早く到達することができると想定してください。相手選手より味方選手の方が足が速い、味方選手の方が相手選手より早くスタートを切ったなど考慮できることはいくつかあります。
この時、間違いなく一番素早く前方へプレーできるものが、これらの選手に対して前方のスペースへパスを出すことです。
では、なぜ②と③を書いたのか、これについて説明します。

上図は、先ほどのプレーの続きを想定したものです。
ここで言いたいことは、「スペースを広くすること」と「パスコースを作ること」の2つです。
この状況を作り出すことでカウンターアタックの成功率は一気に上がります。
なぜなら、相手チームは攻撃側のプレーを制限することが難しいからです。
これについては、また改めてトレーニングメニューを通して話したいと考えています。

 

最後に

これで、サッカーにおける4つの局面全てを見てきました。

今後はトレーニングメニューや試合の分析を通して、実践的にこれらについて詳しく見ていきます。

興味があれば、今後の記事にも目を通していただければ幸いです。