攻撃の復習
ボールを保持するために必要なこと:
①スペースを広く使う
②常に味方をサポートをする
③テクニック
④判断のレベル
今回は、この中の1つ「②常に味方をサポートする」について詳しく話していきます。
「ボールに寄れ!」
「ボールから離れろ!」
チームがボールを持っている時、監督やチームメイトから「ボールに寄れ!」「ボールから離れろ!」と指示を受けて、混乱する選手もいると思います。また指導者の中には、もしかしたら、この基準を持っていない人もいるかもしれません。
今回は、攻撃におけるサポートについて頭の中を整理していきましょう。
さまざまな“優位性”
優位性とは、「別のものと比較したときに、優れている点や性質のこと」を言います。
(参照:webio辞書)
サッカーにおいて、この優位性を考える時、比較対象は相手チームとなります。
つまり、相手チームと比べて、自チームが優れている点を生み出すことが「優位性を作る」
と言うことです。
では、サッカーにおいてどのような優位性が考えられるでしょうか?
1番簡単なことは、選手個人の能力でしょう。
相手の選手より、足の速い選手、テクニックのある選手、体のぶつけ合いに強い選手など選手個人の特徴・能力で相手を上回ること、これはサッカーにおける1つの優位性を言えるでしょう。
ただ、今回は個人ではなく“チーム”としてどのような優位性を生み出すことができるのかについて考えていきます。
攻撃における優位性とは
まずは、攻撃における優位性について考えましょう。
ただ単純に「相手チームより優れている点」と言っても、何を持って“優れている”と言えるのか明確ではありません。
そこで、まずは攻撃の局面における優位性とは何なのか、これについて説明します。
攻撃の局面において、必要なことはスペースを広くすることです。
言い換えると、スペースを確保することです。
冒頭の「ボールを保持するために必要なこと」の①です。
想像してみてください。
半径5mの円の中で鬼ごっこをすること、半径10mの円の中で鬼ごっこをすること、どちらが捕まりにくいでしょうか?
後者です。
スペースが広い方が鬼は相手を追い詰めにくくなります。これをサッカーに置き換えると、スペースが広い方が守備側チームは相手のプレーを制限しにくくなります。
一方で、相手チーム、守備側チームに必要なことは、スペースを狭くすることです。
攻撃側チームがプレーするためのスペースを制限し、ボールを奪うチャンスを作り出します。
以上のことから、攻撃の局面における優位性を当サイトでは次のように定義します。
プレーするためのスペースを確保し、相手チームの守備が制限をかけにくい状況を作り出すこと。
これを踏まえて、どのようにこの状況を生み出すのか考えていきましょう。
1.数的優位
数的優位とは、選手の人数で相手チームを上回る状況です。
その通りです。
だから、“一定のスペース”や“ある特定の選手に対して”、選手の人数で相手チームを上回る状況を作り出すことが、「数的優位を作り出す」と言うことです。
例を図とともに見てみましょう。
数的優位を作り出すことで、守備側が制限をかけにくい状況を作る出します。
相手がボールを奪いに来なければ、ボール保持者に対してプレーするスペースが生まれ、相手がボールを奪いに来れば、他の選手に対してプレーするスペースが生まれます。
2.空間的優位
空間的優位とは、選手の配置によってスペースを作り出すことを意味します。
例で見た方が分かりやすいと思いますので、早速、図を見ていきましょう。
上図の場合、確かにその通りです。
ただし、中央にいる選手にボールが渡り、サイドチェンジをすることができれば、相手に対して優位性を持つことができます。
また、あくまでこれは例の一つです。逆にボールから離れることで相手を引きつけ、ボール保持者周辺にスペースを作り出すことも空間的優位を持つことになります。
3.時間的優位
最後に、時間的優位について簡単に話します。
時間的優位とは、ある選手に対して、プレーするための時間を確保することです。
これは、数的優位もしくは空間的優位が生み出された時に必然的に生まれます。
スペースの確保=プレー時間の確保
このイメージを持ってください。
例えば、先ほどの空間的優位の話で言うと、サイドチェンジをした後、ボールを受けた選手にはスペースと共に、プレーするための時間が与えられます。なぜなら、相手の守備がボール保持者に近づくまでに時間がかかるからです。
この時間的優位を生かして、相手がボールに到達するまでの間に前進することが可能です。
一番イメージしやすい状況が、カウンターアタックのシーンだと思います。
前方にスペースがある時、相手が後退してくるまで、その選手にはプレーするための時間が確保されています。これが時間的優位です。
そして、時間的優位が確保されたからと言って、のんびりプレーしてしまえば、その優位性は消えてしまいます。
サポートの仕方
ここまでの話を踏まえて、本題である「攻撃におけるサポート」の具体的な仕方について話していきます。
いつボール保持者に近づのか
どのような状況でボール保持者に近づく必要があるのか、それはとても簡単です。
ボール保持者が優位性を持っていない時です。
つまり、プレーするためのスペースを確保できていない状況、相手からプレッシャーを受けている状況です。
逆を言えば、相手からプレッシャーを受けていない状況でボール保持者に近づくことは、ボール保持者のスペースを削ってしまいます。
例外はいくつかあります。
例えば、空間的優位を作ることを目的に、相手を引きつけるためにボール保持者に近づくこと、あるいはある特定の選手にプレーしてもらうため、こういった目的がある場合は例外となります。
後者の「ある特定の選手にプレーしてもらうため」と言うのは、ゲームメイクできる選手に簡単にボールを預けることを意味します。例えば、ディフェンスラインの選手からパスを供給することよりも、中盤の選手からパスを供給することの方が望ましい場合や、1対1の場面などです。
ただ、基本的には相手からプレッシャーを受けている状況では、ボール付近のサポートを増やします。
パスコースを作る
数的優位を作り出す上で重要なことは、パスコースを増やすことです。
ある一定のスペースで、選手の人数が相手よりも上回っているだけでは不十分です。
なぜなら、パスコースがかぶってしまえば、数的優位を活かすことができないからです。
黄色が攻撃、白が守備の8vs4のボール保持のトレーニングです。
番号順に選手たちが動きます。
選手たちが動いていない状況では、いくつかのパスコースがかぶっています。つまり、この時本来4人フリーな選手がいるところを、攻撃側が自滅的にその数的優位を減らしています。
例えば、手前左のゾーンにいる選手が中に入り、左外の選手が少し下がることでパスコースが生まれます。またこの時、相手がついてくれば奥のパスコースも見えてくるかもしれません。
次に、手前右のゾーンの選手が下がり右外の選手が上がるとパスコースが生まれます。もしついてこなければ、手前右の選手が空きます。また、奥2のゾーンの選手に相手の守備選手がついていけば、一番奥の選手へのパスコースが見えてきます。
ここで言いたいことは、2つです。
- 数的優位を作るためにはパスコースを作らなければいけない。
- 動く目的には、自分についている相手のマークを外すだけではなく、味方へのパスコースを作ることもある。
スペースを作る
スペースを作るために必要な考え方は、「相手を引きつける」ということです。
「基本的にボールに寄る時は、味方ボール保持者がプレッシャーを受けている時」という話を先ほどしましたが、同時に例外についても触れました。その例外の一つがこれです。
味方選手が一定のスペースに寄ることで、相手をそのスペースに引きつけ別の場所にスペースを生み出す、こうすることでボール付近の選手たちのプレーするためのスペースは狭くなりますが、一部の選手がプレーするためのスペースはより広くなります。
(上図の場合、両サイドの選手と一番奥の選手に対してより広いスペースを与えている。)
もし仮に、ボールに近づく選手に相手選手が付いてこなければ、寄ってきた味方選手がフリーになり、ターンできる状況が生まれます。この時、重要なことが選手間のコミュニケーションです。
*選手間のコミュニケーションについては別記事で話しています。
忘れてはいけないことは、“相手を引きつける”と言っても、“チームとして”スペースを広く使うことです。実際、上図の場合、4分割されたスペースを8人の選手が埋めています。
最後に
ここで少し、チームとしてではなく、個人にフォーカスして話をします。
ボール保持者、味方選手をサポートする上で、1選手個人が忘れてはいけないことが1つあります。
それは、体の向きです。
この体の向きで意識してもらいたいことは、ただ1つです。
ボールと進行方向を、同時に視野に入れることです。
いわゆる、「半身を作る」ということです。
もし体を開いていない状態[ボール方向しか見ていない状態]の選手がいれば、それを改善することが必要です。
これを踏まえて、一度これに関する「1回のトレーニングメニュー[導入からゲームまでのメニュー]」を、別記事で紹介します。
そちらもぜひチェックしてみてください。