サッカー

チームがボールを持っている時には、相手の目の前に立つことを避ける。

チームがボールを持っている時

今回話す話は、チームがボールを持っている時の話です。個人ではありません。
つまり、攻撃の局面におけるオフ•ザ•ボールの話になります。

サッカーには、大きく分けて4つの局面があります。
「攻撃」「守備」「攻撃から守備への切り替え」「守備から攻撃への切り替え」

*ここにさらに、「セットプレー」を局面として加えることも可能です。ただし、セットプレーは「攻撃」「守備」のそれぞれに属すると考えることも可能なので、大きく分ける時には4つとします。

そして、チームがボールを持っている時をさらに、2つに分けることが可能です。
それが、ボールを持っている選手[オン•ザ•ボール]とボールを持っていない選手[オフ•ザ•ボール]です。

日本では、ボールを持っている時の指導が多く見受けられますが、一方でスペインではボールを持っていないところへの指導が比較的多く見受けられます。

サッカーにおいて、フィールド上にあるボールは1個です。そして、プレーする選手は11対11ないし、7対7もしくは8対8です。もっと下の年代であればスペインには5人制サッカーというものがあります。これらんどの年代・カテゴリーであっても、一度にプレーする選手の数はボールより明らかに多いです。
ボールを持っていない選手へのアプローチが多くなることは、いわば必然と言えるでしょう。

なぜ相手の正面に立たないようにするのか?

前置きが少し長くなりましたが、ここから本題に入っていきましょう。

前回の記事の中で、「なぜチームがボールを持っている時には、相手の目の前に立つことを避ける必要があるのかを考えてみてください。」と書かしていただきました。
皆さんは、どのように考えましたか?

この過程がとても重要です。
「何となくこんな気がした」では、選手たちを納得させることはできません。
過去のプレー経験や自身の経歴を盾に、選手たちを納得させずに、プレーを強制させることは指導者の驕りとしか言えません。
過去の経験ををもとに、選手たちに何かを伝えることはできます。それは間違いありません。しかし、サッカーを理解すると言う点に関しては、経験則や主観で物事を考えることは避けるべきです。

「サッカーに正解はない」

サッカーはルールを除いて、絶対的な正解はありません。人それぞれの考え方があります。
ただし、そこには必ず根拠が必要です。
もし、今回の私の問いに対して、感覚的に考えしまったのだとしたら、自分の答えに対して「どうしてですか?」「なぜですか?」と一度自分に問いかけるようにしましょう。この問いかけは必ず、選手からあなたへ投げかけられるものです。

 

では、解説していきます。
チームがボールを持っている時、攻撃の局面には段階があります。
フィールドを3分割した場合、フィールドの特徴から「ビルドアップ」「前進」「フィニッシュ」と分かれます。

今回は「ビルドアップ」「前進」で考えましょう。
この2つを一緒に話す理由は、フィールドの特徴から考えると3つに細かく分けることもできますが、プレーの目的は一緒になります。

「ビルドアップ」「前進」の段階における目的とは、「次のゾーンに進むこと(前進すること)」となります。
前進、前進と続いて紛らわしいので、目的を「次のゾーンに進むこと」と表しました。

では、前進する時に必要なこととは何でしょうか?前進ができる状況とは?

それはボールを持っている選手もしくはボールを受ける選手の前にスペースがあることです。

もうわかったかと思います。なぜチームがボールを持っている時に相手の前に立つことを避けなければいけないのか。

相手を目の間に置いた状態では前進することが難しいからです。

特に自陣ゴール付近のゾーンでは、シンプルかつ安全にプレーする必要があります。1対1で相手を抜き去ることよりも、相手のプレッシャーを交わすことが必要です。
「目の前に相手がいるくらいで、前進できないなんて言っていたら逃げている。」
こう言った意見もあるかと思いますが、“自陣ゴール近くではボールを失うリスクを冒さない”かつ“次のゾーンへの前進を目指す”、これらのことを考えた時、1対1で相手を交わして前進することはチームとして目指すことは言えません。

そして、この問題を解決する手段の一つが「相手の正面に立つことを避け、自分の前に前進するためのスペースを生み出すこと」です。

図で示したものは、その1つの例です。

 

基本>>>発展

これにサッカーのフォーメーション[システム]を交えて話すと次のようになります。
*自チームは1−4−3−3とする。

①「相手はセンタフォワードが積極的にプレッシャーをかけてくる」
ー「じゃあ、センターバック2人で数的優位を作って前進しよう」

②「相手はセンターフォワードとウィングの3人でプレッシャーをかけてくる」
ー「そしたら、サイドバックが下がって常にセンターバックをサポートできるようにしよう」

③「相手は1−4−4−2の2人のフォワードがプレッシャーをかけてくる」
ー「それなら、相手の2人のフォワードに対して、こちらは3人の選手で前進を試みよう」

このように、発展していきます。
あくまで、これらは基本的な考え方です。例えば②の場合、もしかしたらサイドバックの選手が高い位置を取ると、相手のウイングの選手はその動きについていき、ボールを持っているセンターバックの選手にプレーするためのより広いスペースを与えることができるかもしれません。フィールド上で起こる全ての現象がここで紹介した方法で、解決するわけではありません。
ちなみに、今回は11人制サッカーで例を3つ紹介しましたが、これは7人制であろうが、8人制であろうが応用できることです。

これがサッカーを教えると言うことです。

最後に

サッカーをより良くプレーするためには、テクニック[技術]は必ず必要です。
これは間違いありません。
どれだけ良いポジションを取っても、パスが大きくずれたり、コントロールが大きくなったりと技術的なミスが起こればボールを失ってしまいます。

しかし、一方で技術だけがあれば良いのかと言ったら、そうではありません。
特に、スペインにくる日本人留学生選手にあることですが、技術的に周りの選手と比べて優れている場合でも、試合に出ることができないことがあります。
これは、サッカー理解度・プレーの理解に差があるからです。

10mのパスを正確に蹴ることができても、10m先のフリーの味方の選手を見つけることができなければ、何も役に立ちません。もっと言えば、パス云々の前に味方からボールを受けられる位置にポジションを取ることができなければ、それは「サッカー選手としてレベルが高い」と言うより、「ボールを足で扱うことが上手い人」と言うことになります。

つまり、サッカーの技術とは、戦術的な要素と組み合わせることができて、実際の試合で使えるものとなると言えます。
ただし、トレーニングにも段階があります。1回のトレーニングは、3〜4つのメニューにで段階的に行うことが一般的です。例えば、1時間の練習で考えてみましょう。
最初の15分を相手のないドリルトレーニングでパス&コンロールのメニューを行います。次に数的な優位性が高い状況でのボール保持のメニューを15分(例:10対6)、さらに次の15分では数的な優位性を少し下げて、かつゴールのあるメニューを行ってみましょう。(例:6対6+2のボール保持から規定のパス本数を繋いだら相手ゴールへ向かう。)
そして最後の15分でゲームを行います。

これも、あくまで例です。
ここで言いたいことは、「サッカーの中で、技術のレベルを高めていく必要性」です。

そして、今回話した内容は、スペインの7•8歳の選手たちが既に理解していることです。これがベースとしてある選手と、そうでない選手には必ず差が生まれるでしょう。
指導者の方は、できるだけ選手に分かりやすくサッカーを理解してもらえるように努めましょう。