サッカー

守備をどのように練習していくのか?

攻撃の練習の割合が多い

トレーニングメニューを紹介する本や雑誌、また実際に行う練習の中では比較的攻撃の練習が多いかと思います。

特に、足元のテクニックが重要視される傾向にある日本では、おのずと攻撃の練習の割合が多くなると思います。

仮に、守備について話すとしても、攻撃の話のついでくらいで済まされてしまうこともあります。

そこで今回は、どのような段階踏んで守備について練習していくのかについて話していきます。

守備の種類と教える順番

守備を選手に教える上で、何から教えればいいのかわからない時、当サイトでは次のように考えます。

ボールを奪いに行く

まず、守備について選手に教えることは、ボールを奪いに行くことです。
ただし、これは「選手に教える時」です。「指導者が学ぶ時」ではありません。

つまり、指導者は選手にサッカーを教える上で、まず最初にボールを奪いに行くことを求める一方で、ボールを奪いに行くリスクについて理解しておかなくてはいけません。
これについて詳しくは別記事で話しています。

なぜ最初に、選手たちに対してボールを奪いに行くことを求めるのか、これには2つ理由があります。

1つは、攻撃のクオリティーを高めるためです。
最初からゾーンを守るブロックの守備を行った場合、攻撃側は多くの時間をプレッシャーを受けずに練習することとなります。そのため、素早くプレーすることを学ぶことがとても難しくなります。プレッシャーを受ける中でも素早くプレーするためには、守備のクオリティーが求められます。

もう1つは、ゾーンで守る守備をしたとしても、最後はボールを奪いに行くアクションが含まれるからです。
例えば、中盤のブロックでゾーンで守るとします。しかし、ずっと決められたゾーンを守っているだけでは、ボールを奪って相手ゴールに向かうことはできません。
サッカーでは、相手ゴールを目指さなくてはいけません。なぜなら、サッカーは相手よりより多くの得点を取ったチームが勝つスポーツだからです。
そのため、ゾーンで守りながらも、例えばサイドにボールが動いた時に相手に対してプレッシャーをかけるといったように、必ずボールを奪いにくアクションが含まれます。
だから、最初にボールを奪いに行くことを選手たちに教えるべきだと考えます。

「ボールを奪いに行く」というアクションでまず抑えてもらいたいことは、「ボールを中心に守備ブロックをコンパクトにする」ということです。

ゾーンで守る[ブロック]

次に、教えるべきことは「ゾーンで守る」もしくは「エリア内の守備」です。
チームコンセプトが高い位置でのブロックの場合、基本的には「ゾーンで守る」よりも「エリア内の守備」を優先して教えるべきだと考えます。

ただし、高い位置でのブロックを選択しているからと言って、“ゾーンで守ることを教える必要はない”ということではありません。
あくまでも優先順位の話です。
高い位置でのブロックでプレッシャーをかけ、相手にその守備ブロックを超えられた時には、チーム全体が後退し、相手の前進を防ぎ、中盤あるいは低い位置で守備ブロックを形成しなくてはいけません。もしこれをしなければ、後手に回り続けて、自陣ゴール付近まで相手の前進を許すこととなります。

選手を育成するという観点でも、チームを成熟させるという観点でもゾーンで守ることは教えるべきことです。

そして、ゾーンで守ることを教える上で、抑えてもらいたいことは「守備の優先順位」です。
守備とは何なのか?どこのスペースを優先的に守らなくてはいけないのか?
これを正しく教えることが重要です。

エリア内の守備

次に、エリア内の守備です。
エリア内の守備とは、ペナルティエリア内とその付近における守備を言います。
これは、攻撃における「フィニッシュ」という過程と対となるものです。

ペナルティエリア内、またその付近では何をしなければいけないのか?
どのようなプレーが求められるのか?

自陣ゴールが近くにあるエリア内と、そうではない場所では守備の仕方は異なります。
なぜなら、1つのミスが相手のシュートチャンス・ゴールチャンスによりつながりやすい場所だからです。

ここで抑えなくてはいけないことは、マークのつき方・体の向き・クリアの質です。
どのようにマークに付くか?その時の体の向きは?クリアはどこへどのようなクリアをするべきか?

同時に個人技術を練習する

ここまで話してきた「ボールを奪いに行く」「ゾーンで守る」「エリア内の守備」に加えて、同時進行で練習するべきことがあります。

それは、選手個人の守備の技術です。

例えば、1対1におけるステップ・体の向き、ボールを奪いに行くタイミングやヘディング・クリア・スライディングと言ったボールを伴う技術・背後へのボールに対しての対応の仕方などがこれに含まれます。

これらのトレーニングは、チームで行う守備の仕方に付随するものとなります。
例えば、守備ブロックを上手く組織ずることができて、ボールに対してプレッシャーをかけることができているのにも関わらず、1対1で相手にかわされて守備が機能していないとします。この時、チームのトレーニングの最初に1対1のトレーニングを入れてみるといいでしょう。

実際、私の所属するチームでは、その時点で次の対戦相手を想定した時に欠けているもの・足りないことを練習します。
具体的な例を2つ出します。
①昨シーズン、自チーム(ユース3年目のチーム)とレアル・マドリッドのユースC(ユース1年目のチーム)がリーグ戦で戦うことになりました。レアル・マドリッドの選手たちは個人の技術が高く、1対1で相手を抜くことが得意な選手が多いです。そのため、そのリーグ戦の週のトレーニングの守備をテーマにした日の最初のトレーニングは1対1に関するものでした。
②今シーズン、1つ下のリーグから昇格してきた自チームは、フィジカルを活かして長いボールを多用してくる相手チームたちに苦戦することが多いです。そのため、週4回のトレーニングの内、必ず一回はクロスや背後へのボールに対しての守備の練習を入れています。

練習メニューの例

ここまで話してきた内容を踏まえて、練習メニューの例を作ってみました。
この後、それぞれのメニューについて解説を加えていきます。

トレーニングの流れ

今回紹介するトレーニングは全部4つです。
練習時間の合計は60分を想定します。また、参加する選手の人数は、フィールド20名+GK2名の合計22名とします。

トレーニング①では、グループに分かれて2つのトレーニングを行います。
①-Aと①-B、それぞれ10分ずつ行います。【合計20分】
その後、トレーニング②からは全体でトレーニングを行います。
トレーニング②を15分、トレーニング③を25分行います。なお、トレーニング③では最初の15分を制限・ルールありで行い、残りの10分で特別なルールなしでそのまま試合を行います。

①-A:10人+1GK

🔴:守備 🔵:攻撃
1対1を3回行う。
1-DFの選手から四角の奥側で待つ選手へ浮いたボールでパス。
→四角の中で1対1。OFはゴールへシュート。DFは奪ったら、外へ大きくクリア。
*笛で次へ。
2-サイドからのクロスに対して、ペナルティエリア内で1対1。
*プレー後、OF・DFともに四角の中へ入る。笛で次へ。
3-四角から少し離れた位置にいる選手が浮き玉のボールを四角の中へ投げる。
→1対1で競り合い。DFは外へクリア、OFはコントロールしてシュートもしくはボールをゴール方向へそらすことを目指す。
*ローテーション右へ。DF→クロス→OF→ボール投げる→DF

テーマ:守備のテクニック。
1-ボールの移動中にできる限り相手へ近づくこと。相手の目の前で止まり、相手の動きについて行くこと。シュートを打たせない。ゴールを決めさせない。奪ったら、シンプルに外へクリア。
2-サイドからのクロスに対して、ボールを視野に入れつつ、腕で相手を触りながら、相手をマークする。シュートを打たせない。ゴールを決めさせない。奪ったら、シンプルに外へクリア。
3-相手の背中を触った後、素早く後方へ下がり助走をとり、ボールの落下地点でクリアする。相手に落下地点に入られボールをコントロールされた時、相手に前を向かせない。その上で、シュートを打たせない。ゴールを決めさせない。奪ったら、シンプルに外へクリア。

①-B:10人+1GK

4対4+3フリーマンのボール保持。フリーマンの内、外側の1人はGK。
ボールのあるグリッドで、4対3+2フリーマンのボール保持[6対3]。攻撃側はパスを5〜7回つないだら、反対のグリッドへボールを運ぶことを目指す。グリッド間のスペースにいる守備側の1人の選手は反対グリッドへのパスカットを考える。
守備側はボールを奪ったら、どちらかのグリッドへパスでボールを運び、そのグリッド内で同様にボール保持を行う。一方で、ボールを奪われた攻撃側は奪われたグリッド内での即時奪回をまず目指し、もしグリット外へのパスを許してしまった場合、ボールのあるグリッドへ奪いに行く。

テーマ:積極的にボールを奪いに行く
守備側は数的不利な状況なので、ボールを中心にコンパクトにし、ボールからより遠い位置にいる選手はマークしない。ボールが反対のグリッドに移動した時には、全力でスプリントしてボールを奪いに行く。この際、4人の内1人はグリッド間に移動する。

6人1グループを3つ作る。GKはピンク色の丸の位置にポジションをとり、フリーマンとしてプレーする。両サイドの🟡はフリーマン。
ボールサイドでは、6対6+2フリーマン+GK[9対6]のボール保持。反対サイドにはGKともう一つの6人1グループ。
攻撃側[ボールを持っているチーム]は10本のパスをつないだ後、反対サイドへボールをパスで運ぶ。守備側は、ボールが反対サイドへ移動したら、ボールのあるサイドへボールを奪いに行く。一方で、守備側がボールを奪った時には、守備側は奪ったボールサイドとは反対のサイドへパスで運び、ボールを奪ったゾーンに残る。ボールを奪われた攻撃側は、奪われたサイドで即時奪回を目指し、即時奪回できればボール保持を続け、できなければ反対サイドへボールを奪いに行く。

テーマ:積極的にボールを奪いに行く
守備側は数的不利な状況なので、ボールを中心にコンパクトにし、ボールからより遠い位置にいる選手はマークしない。ボールが反対のグリッドに移動した時には、全力でスプリントしてボールを奪いに行く。チーム全体で奪いに行く。

ボールのあるコートで7+GK対6[8対6]、ボールのないコート側の点線とセンターラインの間のスペースで3対4。
ボールのあるコートでボール保持。常にボールサイドのGKからスタート。攻撃側はボールを10本回した後、相手コートにいる味方選手3人とともに、相手ゴールを目指す。この時、相手コートに入れる選手は攻撃側のCB2人と守備側のCF1人を除いた17人[8対9+GK /8対10]。そのため、相手コートに侵入した攻撃側は、相手の守備選手が戻ってくる前に素早く相手ゴールを目指す。一方で、守備側は、プレッシャーをかわされた時、素早くボール方向へ対して後退し相手の前進を防ぐ。守備側はボールを奪ったら、相手のゴールを目指す。
指導者が笛を吹いたら、最初の並びに素早く戻る。2回目の笛でGKから3対4のスペースへロングボールを蹴る。3対4のゾーンで競り合い、こぼれ球を回収したチームが攻撃。

*ボール保持を開始するチームは時間で交代。7分×2(間1分休憩・交代)

テーマ:ボールを積極的に奪いに行く。ロングボールに対する競り合い。
ここまでトレーニングしてきた要素を全て含む。
ボール保持の中で、積極的にボールを奪いに行くこと。GKからのロングボールに対しての競り合い。自陣ゴール前まで相手にボールを運ばれた時のエリア内の守備。

その後、制限をなくし、そのまま11対11のゲームをしてトレーニングを終える。

*派生:ゾーンで守る[ブロック]の守備の要素を入れたい場合。
最初のボール保持を点線と点線の間のスペースで行う。

最後に

守備のトレーニングをすることは、攻撃のトレーニングをすることと同様に重要です。
サッカーは4つの局面から構成されます。その内の1つである守備を抑えることは、チーム・選手を成長させる上で必要なことです。

また、守備のクオリティーが上がれば、攻撃のトレーニングをする際の相手のレベル上げることになり、クオリティーの高まった守備に対して攻撃のトレーニングを行うことで攻撃のクオリティーも上がります。つまり、相乗効果です。

今回の記事が参考になれば幸いです。