サッカー

最終ラインから2番目の相手に飛び出すな!

今回のテーマ

今回の記事のタイトルは、「最終ラインから2番目の相手に飛び出すな!」です。

この言葉だけでは、今回のテーマを想像しづらいかもしれないので、まずはおおまかなことからから話していきます。

おおまかに言うと、今回話をすることは、守備についてです。

サッカーには、大きく分けて4つの局面があります。
「攻撃」「守備」「攻撃から守備への切り替え」「守備から攻撃への切り替え」、この4つです。

その中の「守備」について今回は話していきます。
守備と一言で言っても、さまざまな状況、さまざまな要素があります。これは他の3つの局面でも同様です。
技術的要素、戦術的要素、身体的要素、精神的要素と大きな枠組みがあり、それを色々な状況で使いこなすことが良いプレーにつながります。

「最終ラインから2番目の相手に飛び出すな!」
これは、守備という局面における個人戦術の話になります。

最終ラインから2番目の相手とは?

問題:

突然ですが、あなたは上図の状況でどのような判断をしますか?
あなたは“選手1”です。相手選手2がドリブルで自陣ゴール方向へ攻めてきます。あなたのいるサイドのタッチライン付近には相手選手1がいます。

  1. ボール保持者との距離を詰める
  2. 後退する(後方に下がる)

*他にも相手選手1へのパスコースを切りながら、ボール保持者にプレッシャーをかけるなど方法はありますが、今回は「ボール保持者との距離を詰めるのか、それとも保つのか」の2択で考えます。

負けている状況か、勝っている状況か、引き分けている状況なのか、こういった試合状況などは考えません。また、相手との力の差も考えません。相手が自分たちより上手い、下手と言ったことも考えません。

あなたがサッカー指導者として、この状況での守備をどのように選手に伝えるのかを考えてください。

「状況によって判断しろ!」

このように言うサッカー指導者がよくいます。
我々サッカー指導者は、どのような状況でどのような判断をすることがいいのかを教えることが仕事です。
「選手に考える力をつけさせる」と言って、我々が何も考えていないようでは話になりません。

このように言うと、次のようなことを言う人がいます。

「決められたことばかりやって何が楽しんだ?」「選手が自分でプレーを考えるから楽しんのだろう」

これに対して、私は2つのことを言わさしていただきます。
1つは、サッカーはチームスポーツであることです。自分勝手に好きなことばかりやっていたいのであれば、個人スポーツをお勧めします。
2つ目は、最終的には選手の判断だと言うことです。我々サッカー指導者は、理にかなったこと、そして基本的なことをまずは教えます。その後、選手が実際にプレーする中で自分の今いる状況がどう言ったものなのかを考え、判断します。

今回話す内容も基本的な考え方です。
これを知った上で違う考え方を持つことと、これを全く知らない状況で選手個人が違う考えを持つことは、全く異なる意味を持ちます。

それでは、先ほどの問題の回答と解説に移ります。

まず正解は、後退する(後方に下がる)です。
後退すると聞くと、消極的な印象もありますので、「ボール保持者との距離を保ちながら後退する」と考えてください。

色々と説明するよりも、図で見た方が早いので、早速図を見ていきましょう。

上図は、❶ボール保持者との距離を詰めた時の状況を表したものです。
図のように、ボール保持者との距離を詰めることで相手チームの選手に背後のスペースを与えることになります。背後のスペースをあえて違う言葉で言うと、自陣ゴールにより近いスペースと言えます。

もし仮に図のように、相手チームに背後のスペースを与え、自陣ペナルティエリア付近に侵入されたとします。この時、エリア内は3対3の数的同数になる可能性があります(センターバック2人+サイドバックvs赤の選手3人)。
この状況で仮に、センターバックの選手がボールを奪いにいけば、エリア内では数的不利な状況になり、相手のフリーの選手にボールがつながれば、失点する可能性がより高まります。(*尚、自陣ペナルティエリア内のサイドからの攻撃に対しての守備については改めて別記事で話します。)

ボール保持者との距離を詰めることで、相手にプレッシャーをかけることができるかもしれませんが、そのアクションには大きなリスクを伴うと言うことを忘れないでください。
(「守備において理解しておかなくてはいけないこと」と言う記事で詳しく話しています。)

次に、❷後退する(後方に下がる)について、図とともに見ていきましょう。

ボール保持者との距離を保ちながら、後退する目的には2つあります。
1つは、先ほどのボール保持者との距離を詰めた場合に起こるリスクなくすことです。つまり、相手に背後のスペースを与えないことです。
もう1つは、味方選手が後退してくる時間を作り出すことです。
日本サッカー界では“リトリート”という言葉を使うと思います。

図のように、味方選手が後退(帰陣)することで、ボール保持者に対してプレッシャーをかけます。一方で、選手1(あなた)はボールがタッチライン付近にいる相手選手1にボールが出た時にプレッシャーをかけにいきます。
こうすることで、相手のサイドからの攻撃に対して、ボール保持者にプレッシャーをかけながら、自陣のペナルティエリア内で数的不利を作らずに守備をすることができます。

 

では、最終ラインから2番目の相手とは何なのか?

 

それは、次のように説明することができます。

最終ライン(DFライン)の1選手の、近くもしくは背後にいる相手選手を“最終ラインから1番目の相手”とする時に、その相手選手より相手ゴールに近い位置にいる相手選手を“最終ラインから2番目の相手”とする。

もっと簡単に言うと、最終ラインで守備をしている自分の背後に相手選手がいる時、自分の目の前の相手選手が“最終ラインから2番目の相手”となります。

 

今回のまとめ

今回の記事のタイトルは、「最終ラインから2番目の相手に飛び出すな!」と言うことでした。

つまり、「最終ラインで守備をしている自分の背後に相手選手がいる時、自分の目の前にいる選手に対してボールを奪いに行くな!」と言うことです。

話の中でも言いましたが、我々サッカー指導者は、基本的なことをまずは教えます。その後、選手が実際にフィールド上でプレーする中で、今ある状況がどう言ったものなのかを考え、判断します。
これは、サッカー指導者も言えます。
これはあくまで基本的な考え方です。これを踏まえて、積極的にボールを奪いに行く手段を自チームで取ることは何も問題ありません。

例えば、高い位置でのブロック(相手コート内にチーム全員が入るような形で相手にプレッシャーをかけに行くこと)をするとき、サイドバックの選手が自分の背後に相手を置きつつも目の前の選手にプレッシャーをかけに行くこと、それに対してセンターバックの選手が横にずれてスペースを埋めること、これをするときに次のような説明があれば何も問題ありません。
「積極的に相手にプレッシャーをかける時、私たちはリスクを冒してボールを奪いに行く。しかし、高い位置でのブロックであれば仮に相手にプレッシャーを突破されても、自陣ゴールからの距離がまだある。自分たちの高いブロックを突破された時は、素早くチーム全員で自陣に戻ること、そして相手の前進を妨げ、そこからまた守備を開始するぞ。」

しかし、もし仮に「最終ラインから2番目の相手に飛び出すな!」と言う基本的なことを知らない場合、何がリスクなのか選手たちは理解できず、また自陣ゴール近くでも同じように積極的にボールを奪いに行くアクションを行ってしまうでしょう。
*これが意図的ならば問題ありませんが、チームの意図とは異なるものであれば問題です。

ボールを積極的に奪いに行くこと自体は何も悪くありません。
しかし、それに伴うリスクを理解しているかどうかが、とても重要です。
プレーの表面的な部分だけでなく、その裏にある理屈を考えましょう。理屈を知ることで、応用的な考え方にも対応できることになります。
この応用的な考え方に対応できる選手こそ、「賢い選手」と言えるのではないでしょうか?

 

次回は、この考えをもとに、攻撃から守備への切り替えの局面での数的不利な状況について話していきます。